表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/151

迷いました

 ………………。

 ………………。


 なんとかウサギから逃げ切る事が出来た。

 勝利の要因は、歩幅だろうか。


 ……いや、勝利はおかしいか。

 別に戦って勝った訳じゃないし。


 でも、俺は生きている。生き残っている。

 生存競争という意味では、勝利でもあながち間違ってはいない。


 うんうん。

 だが、問題が一つ。


 ……ここ、どこ?

 いや、森の中なのは相変わらずだけど……迷った。


 まいった。本当に迷った。

 ……はっ! まさか、あのウサギの本当の狙いは、俺を森の中で迷わす事なのでは?


 ………………いや、それは考え過ぎか。

 とりあえず、走って喉が渇いたので、収納してある魔力水と果物でリフレッシュ。


 あとは、落ち着くための深呼吸。これ大切。

 すう~……はあ~……すう~……はあ~……。


 よし。一応安全だし、下手に移動せず、今後の事を考えよう。


 やはりどうしても欲しいのは、「火」。文明の光。

 それをどう手に入れるか、だ。


 ………………。

 ………………はうあっ!


 再びの天啓。

 雑草を集めての「下位変換」は失敗したようなモノだけど、ここで落ちている木の枝を集めて「変換」すれば、木材とかにならないだろうか?


 で、擦り合わせて摩擦で火を起こす。

 木の枝同士でやるより、木材でやった方がやりやすいのは明白。


 推測の域は出ないけど、可能性は高いと思う。

 ただ問題は、木材になるまでの必要数だろう。


 木の枝だって、そうそう落ちているようなモノでもない。

 となると……折る?


 わざわざ折るのもどうなんだろう。

 それに、生木は乾燥させないと……そこら辺ってどうなるんだろう?


 アイテムボックスの中は時間が進まないし、生木は生木のままじゃない?

 となると、乾燥のために出しておかないといけなくなる。


 面倒。

 一応、まだ本当に困ってはいないし、最後の手段にしておこう。


 それでも一応、確認のために折ってみる。


 ………………。

 ………………折れなかった。


 そりゃそうだ。

 簡単に折れる訳がない。


 というか、かったい。

 普通にぶら下がる事ができるし。


 でも、あの凶悪ウサギは普通に切っていたな。

 ……やめろ。考えちゃいけない。


 どうやら、俺の力は大した事ないようだ。


 という訳で、木の枝を集めつつ移動……じゃなくて、迷っていたんだった。

 でも、このままここに居ても意味はない。


 月明りで動くのは怖いし、まだ日は高いので、今の内に行動するべきだ。

 なので、眠れそうな場所を探しつつ、木の枝を集めていく。


 幸いにして、果物はまだあるし、魔力水もたんまり。

 いざという時は複製という手段もある。


 悲観するにはまだ早い。


 眠れそうな場所は……やっぱりできれば川の近くがいい。

 川のせせらぎ音って聞いているだけで癒されるから。


     ―――


 翌日。拠点になりそうなところは見つかっていない。

 つまり、未だ成果なし。


 それと、服に新たな穴が空いていた。

 ……あれ? もしかして、寝てから襲われている?


 でも、服に穴は空いているが、俺の肌は一切傷付いていない。

 となると、襲われたというのは変だ。


 襲われたのなら、俺も傷付いているはずだし。

 なら、服だけを狙う何かという事になる。


 ………………どんな変態だ、それ。

 とてもではないが、そんなのが生存しているとは思えない。


 だが、ここは異世界。

 そういう決め付けは危険かもしれない。


 ……まあ、そんなの居ないと思うけど。

 いや、待てよ。


 もしかして、例のアレか?

 ――服だけ溶かすスライム。


 ……誰も見ていないところで服を溶かされても虚しさしかない。

 いや、そういう趣味がある訳ではないけど。


 それに、一部分だけって。

 やるなら一気に全部だろうから、服を溶かすスライムの線はないな。


 それとも、あえて衣服を残した方がより興奮するという性癖持ちのスライム………………はないか。


 まあ、気付かぬ内に、どこかに引っかけたんだろう。多分。

 そう結論を出して、今日を始める。


 朝ご飯は、魔力水と果物。昨日と同じ。

 そろそろ違う味が恋しい。


 ただ、水に関してはある程度出し方に自由がある事を発見した。

 ×1で、そのまま手のひらからドバドバと出したり、指先から水鉄砲のようにもピューッと出せる。


 さすがに高圧では出せないので攻撃には転用できないが、飲む分には問題ない。

 とりあえず、水不足にはならないのは助かるとしか言えない。


 でも、意志でとめる事もできるんだけど、ゴクゴクッと軽く喉を潤したあとにとめても、×1を消費してしまう。


 それに、まだ回収している分があるからいいけど、いざという時の場合は複製に頼るのは変わらないから……今後のためにも、どうにか金を稼ぐ方法を探らないといけない。


 そのためには、やっぱりこの森をどうにか出て、人が居るところに行かないと。

 心の中で目的を増やしつつ、水分取って、果物を食べて、朝食を終えたら行動を開始する。


 昨日に引き続き拠点探しは行うが、今日はもう一つ目的がある。

 それは、木の枝集め。


 昨日の内に、9本までは集まった。

 5本では何も起こらなかったので、次の目安である10本まであと1本。


 行動を開始してから少しして、10本目となる木の枝を手に入れる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ