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それ以外は理解できました

 ラロワさんからの秘密の依頼を受けた事で、シュミットさんは忙しくなった。

 やる気の問題で「無銘の剣(完品)」を見には来ているようだが、俺のところに来るのは目に見えて少なくなった。


 一方、俺の方は特に変わりない。

 シュミットさん製作の武具ができ上がったら、回収しに行くだけだ。


 アイテムボックスに入れれば見つからないし、取られる事もない。

 まあ、念のために鑑定をかけておけば最悪複製できるし、問題ない。


 という訳で、そっち方面は大丈夫。

 なら、他に問題があるかどうかと問われると……実はある。


 ヴィリアさんたちが行っている人捜しもそうだけど、今俺が問題視しているのは、個人的な事。

 正直言って、誰にも相談できない。


 それは……最近の事。

 寝て起きると、ベッドが湿っている気がしている。


 いや、もう現実を見よう。

 確実に湿っています。


 しかも、日に日に湿り気が増していっている。

 まさか、寝ている間に……。


 確かに、湿り気を感じるようになってから、水関係の夢を見るようになったけど……。

 え? 本当にやっちまったの? 俺?


 で、でも、そういう跡はなかったよ。

 ただ湿り気があるだけで……はっ! まさか、そういうベッドなの?


 吸水性抜群?

 いや、この場合は、速乾性が抜群か?


 いや、たとえベッドがそうだとしても、衣服は普通というか、そこまでのモノじゃない。

 だから衣服にそういう部分がなければ………………あるね。


 ……でも、場所が想定と違う。

 大事な一部とその周辺ではなく、腕とかの方が湿っている……ような?


 まあ、だからといって、なんの安心はできないけど。

 何しろ、この場合で怖いのは、ベッドの処理というか、シーツを変えたりといった準備をしているのはここのメイドさんたちだという事だ。


 自分でやっていない。

 つまり、メイドさんたちに、この湿り気に関してバレている可能性が高いという事。


 お漏らし……のウワサが囁かれてないだろうか?

 すっごく不安。


 でも、わざわざ聞くのは自ら墓穴を掘るようで無理。

 なんとなく遠回しに聞くという手段なら……いや、こういう場合、ピン! と察せられるメイドさんに話してしまう気がする。


 ……駄目だ。八方塞がり。詰んだ。

 きっとウワサが広がっていき、いずれヴィリアさんの耳にも……ああっ!


 なんとも言えない気持ちになって、不貞腐れるように寝た。


 ………………。

 ………………。


 なんか冷たい気がする。

 いや、大事な一部だけではなく、こう……全体的に?


 そう。全体的に湿り気を感じるというか、水そのものにくっつかれているというか……。

 うーん……。


 思い切って目を開き、確認。


 俺の隣で、見知らぬ女性が寝息を立てていた。

 一瞬思考がバgる。


 落ち着くために深呼吸。


 すると、俺が動いた事で女性が目を覚ます。


「起こしてしまいましたか。とうとうバレてしまいましたね」


 少し恥ずかしそうに女性が笑みを浮かべる。

 改めて確認するが……やはり見知らぬ女性。


 まるで液体のように漂っている、澄んだ水色の髪をもつ美人系の女性。

 髪色に合わせたドレスを身に纏っている。


 頭にウサ耳はないので、最近知り合ったバニーさんたちではない事はわかった。

 となると……本当に誰かわからない。


 これでまだ、メイドさんの誰かが来てました、ならわかる。

 ……そこまで好感度が上がっているとは思えないけど。


 とりあえず、聞かなきゃわからない。


「えっと……どちらさまですか?」


「ああ! これは失念しておりました。この姿に戻ってからお会いするのは初めてでしたね」


「戻って?」


「はい。神の御使いであるハクウさまのおかげで、湖の水が前よりも綺麗になり、その影響を受けて、私もこのように本来の姿に戻る事ができました。ありがとうございます」


 そう言って、女性が佇まいを正して一礼する。


 ……御使い……湖……。


「もしかして、水の高位精霊?」


「はい。そうです」


 女性――水の高位精霊が、嬉しそうに微笑む。

 はあ~……なんというか、見違えた。


 闇堕ち要素が一切なくなっている。


 ただ、いくつか疑問があった。


「それで、どうやってここに?」


「お忘れですか? 『精霊転移門エレメントポータル』はハクウさまがお持ちなのですよ」


 ああ、そういえば、そうだった。

 いつ出てこられてもいいように、普段はアイテムボックスに入れずにポケットに入れているんだった。


 そこまで大きいモノじゃないし、入れっ放しで忘れる時がある。

 だから、いつ出てきても不思議ではない。


 そこで更なる問題なのは――。


「なんで一緒に寝てたの? 声くらいかけてくれてもいいのに」


 詳しく聞くと、どうやら俺の魔力が関係していた。

 どうやら、俺の魔力は心地良く感じるらしく、落ち着くそうだ。


 次の日の活力が違うらしい。

 ただ、陽の出ている間は湖の水の浄化が忙しいため、今のところ夜しか来れないらしい。


 俺はもう既に寝ているので、それならいっその事一緒に寝てしまえばいいのではないか? という結論に辿り着いて、ここ数日一緒に寝ていたそうだ。


 なるほど。

 そこで一緒に寝るという選択以外は理解できた。


「そこは別に一緒に寝なくても」


「いいえ、駄目です」


「室内に」


「駄目です」


 圧が強い。

 また闇堕ちされても困るので、俺は折れた。


 湿り気は、水の高位精霊が一緒に寝ていたから。

 水分豊富そうだしね。


 とりあえず、これで湿り気問題は解決した……と言っていいのだろうか?

 一応、ラロワさんに、そういう湿り気ではないですよ、と弁明しておいた方がいいかもしれない。


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