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居ませんでした

 ラロワさんとシュミットさんが真面目な話を始める。

 といっても、その内容は、これからコーポジレット大国は、インペリオルム帝国からの侵攻を受けるという事と、その理由について。


 ヴィリアさんが匿っているディナさんたちの事も教え、その旦那たちを現在捜索中である事も付け加えていた。


 捜索に関してはヴィリアさんたちだけではなく、諜報部隊であるバニーさんたちも動いているが、未だ見つかっていない。


 上手く隠れていて、誰かしらの協力を得ているのは間違いないとの事。

 それら前情報を伝えて、本題に入る。


「……要は、ワシに武具を作れという事か」


「はい。できれば、一分隊分をお願いできないでしょうか? もちろん、必要素材はこちらで用意します」


 シュミットさんに武具製作を依頼する理由は単純。

 高性能だから。


 さすがに一分隊で国を相手に勝てるとは思っていないが、シュミットさん製作の武具装備なら、相手にとって十分な脅威である、と。


「受け取りも、信用できる者にお願いするつもりです」


 ラロワさんが俺を見る。

 あっ、それが俺なのかな?


 確かに、シュミットさんが押しかけるような形で行動を共にする事が多くなったので、怪しまれる事はないか。


 別に構いませんよ、と頷く。


 それと、この事を秘密にする理由は一つ。

 安全性。


 インペリオルム帝国側もシュミットさん製作の武具は警戒しているから、動きを見せれば何かしらの行動を起こしかねない。


 それが誘拐か、それとも暗殺か。

 なんにしても、過激な手段を取る可能性が高いために秘匿する。


 下手をすれば、孫の少女にもその矛先が向くかもしれないから。

 シュミットさんもそこを危惧しているのか、少し悩んだあとに了承する。


 条件の追加として、護衛の派遣も要請して、ラロワさんは了承。

 表立って護衛するとバレるので、裏から。


 バニーさんたちが任せて、という表情を浮かべていたけど、バニーさんたちがするんだろうか?


 でも、諜報部隊らしいし、そういう事ができてもおかしくないと思う。

 気になるのは、バニースーツ。


 ここはお店に合わせるために着ているんだと思う。

 でも、他の時はどうなんだろうか?


 これが諜報部隊としての仕事着で、常に着ているのなら……正直言って、俺はこの国を侮っていた。

 まったくけしからん。いい意味で。


 存分に隅々まで調べてくれと、自らの体を差し出す者で溢れるのは間違いない。


「何を頷いているのかしら?」


「バニースーツがもたらす平和について」


「それは素晴らしいわね」


 嬉しそうなメールママさんのお胸がたゆんと揺れる。


 ………………。

 ………………。


 絵力が強いっ!

 思わず、マッマさんと呼びたくなった。


 俺が悶々としている間も、二人の真面目な会話は続いている。


「しかしまあ、武具製作の依頼だけなら、気を付ける必要はあったが王城でも構わなかった。わざわざワシをここに呼んだのは、別の話題……そっちが本題ではないのか?」


「やはり、わかってしまいますか。実は……」


 メールマッマさんから説明を受けながら聞く。


 この商店街には、まとめ役というか全体を管理している、グラフ伯爵という貴族が居る。

 グラフ伯爵本人に問題はない。


 まとめ役として、公平に接して商店街を運営しているそうだ。

 ただし、それは少し前までの話。


 最近では、とある商会を露骨に優遇している。

 その商会というのが、ヘンドラー商会。


 色々と悪い噂があるそうだが、商会としての実力もある。

 らしく、直近だと「マジック」シリーズを大量に仕入れたそうだ。


 ……ああ、あの時のか。

 で、グラフ伯爵はその「マジック」シリーズを手に入れるために、ヘンドラー商会との取引を終えてから露骨な優遇を始めたそうだ。


 ラロワさんは、そこで何かあったと睨んで調べてはいるが、証拠は出ていない。


 メールマッマさんが困り顔を浮かべている。

 ……どことなくエロい。


 他のバニーさんたちも困り顔なので、諜報部隊としても悔しい思いをしているのだろう。

 バニーさんたちのために頑張れそうな気がする。


 ここで問題なのは、ヘンドラー商会の所属。

 商店街にあるのは支店で、本店はインペリオルム帝国。


 つまり、これもインペリオルム帝国による差し金の可能性があるそうだ。

 その辺りも含めて、シュミットさんにも調査の協力をお願いしたい、という事らしい。


 というのも、シュミットさんは「至高の鍛冶師」。

 商店街の重鎮の一人なのだ。


「……いいだろう。ワシとしても、ここが荒れるのは見過ごせん。何人か、声をかけて調べてみよう」


「ありがとうございます」


 ここに協力関係が生まれた。

 真面目なシュミットさんというのを初めて見たかもしれない。


 大人って感じでしたよ。


 そのあとは、バニーさんたちと共に普通に飲み食いをして終わる。

 俺は終始緊張しっ放しだったけど、楽しい時間だった。


 ……また来たいな。

 そんな思いをしながら三人一緒に笑いながら外に出ると……。


「確か、情報の交換だけと言っていましたのに……あらあら、随分と楽しそうですわね、あ・な・た」


 ラロワさんの奥さん……シリスさんが待ち構えていた。


「おじいちゃん! こんな時間までこんな場所に居て!」


 シュミットさんのお孫さんも居た。


 楽しい気分が一転して、シュンとしたラロワさんをシリスさんが、シュミットさんはお孫さんが連れて帰っていった。


 ………………。

 ………………。


 あれ? 俺のお出迎えは?

 ヴィリアさんはどこに?


 ラロワさんとシュミットさんとは別の意味でシュンとなりながら帰る。


 ……今日の夜風は冷えるな。


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