前向きに考えました
天啓が走る。
思ったのだが、金貨を複製すれば……いや、でも、さすがにそれは……。
……一応、確認。
『 金貨
1枚で銀貨100枚の価値。
貨幣国・マネーマーネのみが製造手段を持っている。
それでも知りたい方は、→こちら をクリック!
複製金額 金貨 1枚 銀貨 10枚 』
「こちら」をクリックすれば、製造方法がわかるのか。
まあ、興味ないから見ないけど。
それと、本当に複製できるようだけど……一割高くなっている。
やればやるだけ損だな、これ。
さすがのやらか神でも、ここでそんなやらかしはしないか。
それとも、開発スタッフの神様たちが全力でとめたか。
とりあえず、見なかった事にしよう。
まあ、それでも今後は、図鑑とアイテムボックスを上手く使えば活動範囲を広げられそうなので、少しずつ広げていこうと思う。
一気に広げるのは……ちょっと怖い。
何しろ、ここは俺の頭の中の知識とは違う世界。
その最たる例が、魔力。
つまり、今は危険が一杯という事。
臆病に臆病を重ねて行動するくらいが、丁度いい。
そうして活動範囲を少しずつ広げ……三日が経った。
その間、これといった発見はない。
新たな食材もなかったため、果物以外が食べたくなったくらいだろうか。
といっても、耳が鋭いウサギだけじゃなく、腕が六本ある熊とか、でっかい蜂とか、大きな牙を持つ凶暴そうな巨大な猪とかは見かけたけど。
でも、怖くてというか、そういう隙がなくて鑑定できてない。
逃げるので精一杯だった。
鑑定するのは見ないといけないから、向こうから見られる危険があるから難しい。
……そういえば、異世界といえばのゴブリンを一度も見た事ないけど……居ない?
いや、もしかすると、この森では生きていけないとか、だろうか?
……ナニソレコワイ。
………………。
………………ポジ、ティブ!
前向きでいこう。
いつかこの活動範囲を広げる行動が実を結ぶと信じて。
とりあえず、今のところは果物だけで行動できているけど、そろそろ別の食材が欲しい。
栄養的にも。
鑑定もかけてはいけるのだが、食べられる草とかそういうのは今のところ見つかっていない。
毒草の類いはいくつかあったが。複製可。
そういえば、やらか神が俺の体を丈夫にする、みたいな事を言っていたけど……もしかして、毒とかそういうのにも効果があるんだろうか?
……まあ、怖いから試そうという気は起きないけど。
……でも、いつかお腹の限界がきたら……いや、駄目駄目。
しっかりしろ、俺。
また、そろそろ服の汚れが気になってきた。
洗剤はないが、川で水洗いはできる。
それに、俺は気付いた。気付いてしまった。
確かに新品の服を複製する事はできる。
が、今ここは森の中。
果たして、新品の服でいいのか? と。
新品の服は当然真っ白だ。目立つ。
一方、汚れた服はある意味で自然に溶け込んでいる。迷彩。
もし危険度みたいなモノがあるのなら、新品よりも汚れている方が低いのは確実だろう。
なので、このままでいく。
幸いにして、臭いはまだ気にならないので。
その内、臭いも気にならなくなりそうだから、注意が必要だけど。
それと、この三日間で行っている事がある。
それは、草むしり。
むしってむしって、むしりまくっている。
というのも、「図鑑ボックス(β版)」の機能の一つ。「変換」。
銀貨100枚で金貨1枚になるように、ある程度の数を集めれば、「上位変換」もしくは「下位変換」できるようになるんじゃないかと考えたからだ。
その試しとして、草を集めてみた。
結果。
『 雑草
ただの雑草。少量だが魔力が宿っているため、生命力が他の雑草とは違う。
どこにでもあって、どこからでも生えるって……相当じゃない?
残数 10 』
キリのいい数を集めた。
これで確認。
……「下位変換」ができるようになっている。
雑草の下位って何?
失っても惜しくないので、「下位変換」を選択。
その結果。
アイテムボックス内の雑草10個は消え、その代わりに――。
『 植物油(最低品質)
最低品質の植物油。とてもではないが、食用としては使えない。
エグみしかない。エグみMAX。
その代わり、燃料としてなら、使えない事もない。
残数 1 』
多分だけど、使っちゃいけない部類のヤツだと思う。
死蔵案件間違いなしだけど……いつの日か使う時がくるのだろうか?
いや、でも、燃料になら……なんの燃料?
火そのものがない以上、今のところ使い道がないのは間違いない。
………………。
………………ポジ、ティブ!
気分転換で、川で水切りを行った。
七回はいったね、あれ。
そのまま熱中して水切りをしていると。
――ガサッ。
後方から聞こえた音にビクッと体が跳ねる。
大丈夫。きっと風で木の枝とかが揺れただけ、と後方確認。
「……キル?」
両耳を擦り合わせて、ギャリンギャリンと凶悪な音を鳴らす、例のウサギが居た。
う~ん。初めて鳴き声を聞いたけど……切る? ……斬る? ……それとも、Kill?
どれかはわからないが、俺を獲物として見ているのは間違いない。
もちろん俺は逃走一択。
脱兎の如く駆けだした。
走り回りたい気分。