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圧が強かったです

 そこからの話は早かったというか、「浄化じょうろ」と「精霊転移門エレメントポータル」を試すだけ。


 まず、「浄化じょうろ」の方。

 魔力を注ぐ事で、浄化して無害化する聖水を作り出す事ができる。


 それで本当にヒュルム湖の水を浄化する事ができるのか、試してみる事になったのだが、問題があった。


 ヒュルム湖は巨大である。

 それこそ、海? と言いたくなるくらいに。


 つまり、じょうろ一つで浄化しようとするのなら、どれだけ時間がかかるかわからないのである。

 なので、再び俺の出番かと思った。


 何しろ、俺のは膨大な魔力があるのだし。

 でも、ヴィリアさんから却下が入る。


 理由としては、これはこの国と水の高位精霊の間の問題だから、道具を用意してくれただけで充分だという事。

 納得できる。


 でも、理由はもう一つあった。


「あと、あんたの魔力に、あのアイテムは耐えられるのかい?」


 否定できなかった。

 それに、神器は複製できないので、もし壊れた場合の取り返しができない。


 深く納得できた。


 で、肝心のじょうろに関しては――。


「物が一つしかなく、人の魔力量ではいつ終わるかわかりません。それに、今、この湖に人の手が加えられるのは好みません」


 水の高位精霊が頑なに拒否して、自ら使って浄化していく事になった。

 俺としては水の高位精霊が納得しているのならそれでいいと思うが、ラロワさんたちからすれば、任せっきりなのは心苦しいのだろう。


 何かできる事があればなんなりと、と付け加えていた。

 その瞬間、水の高位精霊の目が光った気がする。


「そういう事でしたら……」


 水の高位精霊が微笑みながら言ったのは、「精霊転移門」の方。

 その機能はその名が示す通り、登録した精霊が出現する場所となる。


 人は使えず精霊のみが使える物で、「精霊転移門」を通して、登録した精霊と話す事もできるそうだ。


 で、その「精霊転移門」を……俺が持つ事になった。


 否定は……できなかった。


 双方からの圧というか、水の高位精霊からはそれ以外の選択肢は認めないという雰囲気を発しているし、ラロワさんたちからは水の高位精霊の機嫌を損ねたくないのでお願いしますという雰囲気を感じたからだ。


 なので、ラロワさんから「精霊転移門」を受け取る。

 その際、肩に手を置かれた。


「任せたよ」


 将来の息子の頼みなら、喜んで。


 という感じで、「浄化じょうろ」は水の高位精霊が使用し、「精霊転移門」は俺が持つ事になった。

 これで問題は解決した……はずだったのだが、新たな問題が浮上。


「精霊如きが竜を撃ち落とす事ができたのは、我に攻撃の意思がなかったからだからな。そこのところを勘違いするなよ」


「あらあら。人かと思えば、竜が人の姿を模しているのですね。という事は、先ほどまで私に撃ち落とされていたのは竜という事になりますが……簡単に撃ち落とせていましたから、もっと低俗なモノかと思っていました」


 リュオと水の高位精霊の間に火花が散る。

 バッチバチのが。


 ヴィリアさんたちとラロワさんたちは、見ない振りと聞こえていない振りをして、我関せずを貫き通している。

 というか、もう余計な問題を抱えたくない、といったところか。


「我を低俗とは、面白い事を言う。なんだったら、ドラゴンブレスでこの水溜まりを干上がらせてやろうか?」


「やれるものならやってみせて欲しいですが、その前に先ほどと同じように撃ち落としてあげます。その方が体も綺麗になって、ドラゴン臭さもなるのではないですか?」


「はい。臭くありません~! きちんと毎日水浴びしてます~!」


 確かに、リュオはきちんと水浴びをしている。

 それも毎日。


 ただ、臭いを気にしているというよりは、リュヒに嫌われないため、という印象の方が強い。

 ちなみにそのリュヒは、リュオの水の高位精霊とのやり取りを傍観している。


「……いいの? 放置しておいて」


「リュオも雄ですから。自分の手だけで守りたい誇り(プライド)もあるのでしょう」


 つまり、興味ないって事か。

 ただ、事態はリュヒを巻き込む。


「あちらからも竜の気配を感じるけど……あなたの関係者かしら?」


「うむ。我の美しい妻だ」


 水の高位精霊がリュヒに気付き、リュオがそう答える。

 リュヒはリュオの紹介に微笑むだけ。


 そんなリュヒを見て、考え込む水の高位精霊。


「……ちなみにですが、私は水の高位精霊です」


 それはわかっている、と誰もが思う。

 何故そんな事を? とリュオも疑問に思ったのだろう。


「なんだいきなり?」


「今の私はハクウさまが言うには闇堕ちですが、元の綺麗な状態に戻れば、ありとあらゆる液体を生成できます。それこそ、美容液関連全般を」


「勝者!」


 リュヒが水の高位精霊の腕を持ち上げて勝利宣言。

 この場に居る女性陣全員が、水の高位精霊側に付いた。


 こうなってくると……無理だ。

 何より、ヴィリアさんもあちら側に居るので、もう俺にはどうしようもない。


「ハクウゥ~! どうにかしてくれ~!」


 だから、リュオが泣きついてきてもどうしようもできない。

 宥める事しかできなかった。


 諦めよう……リュオ。


 そのあとは王都に戻る。

 ヴィリアさんたちはディナさんたちの旦那さん探しに向かった。


 それで、王都観光を希望したリュオとリュヒに対する見張りの意味も込めて、俺が同行する事になる。


 でも、俺もこの世界の町を観光するのは初めてなんだけど……大丈夫だろうか?


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