一筋縄ではいかないようです
高い壁に囲まれた町に着いた。
壁の特定部分には結界魔法が施されているそうで、それで魔物とかの侵入を防いでいるそうだ。
町は、全体的に中世的な雰囲気。
木造もあれば、石造り、レンガ造りの建物もある。
ほぼ一階、二階建てで、それより高いのが数棟あるくらい。
これが一般的らしい。
リュオとリュヒも物珍しそうにしている。
……これまでを振り返ってみると、リュオとリュヒは破滅の山の外は、不滅の森しか行った事がないのかもしれない。
人の世に興味ないと言っていたし。
だから、目に映るすべてが新鮮、と。
まあ、それは俺も同じだけど。
あと、やっぱり町の中に入ると、多種族で構成されている国という事もあって、色んな人種を見かけるので楽しい。
ほどなくして、馬車は三階建ての大きな建物に辿り着く。
ここが宿屋のようだ。
といっても、まだとまらない。
ここには馬車と余分な荷物を置くだけ。
あまり時間はかけたくないそうなので、ヒュルム湖に向けて直ぐ出発である。
行き来は徒歩。
ヒュルム湖が今の状態では、馬が嫌がって馬車で向かえないそうだ。
大体三時間くらいかかるそうだ。
それでも、ヒュルム湖までは整備された道が元々あるので、そこまで苦ではなかった。
―――
少し進んだ先の空中に、黒い靄のようなモノが漂っていて視界が悪い。
道はまだまだ続いているが、ヒュルム湖は見えていないが、ここでストップが入る。
「ここから更に進んでいけばヒュルム湖に辿り着くけれど、この辺りから先はもう水の高位精霊の領域。ある程度近付くと、津波が発生して押し返される」
その割には周辺に森があるようだけど、その森は無事だ。
まあ、水の高位精霊だし、侵入者だけを押し返すように津波を操作している、なんてところだろうか。
「この黒い靄はなんなんですか?」
「水の高位精霊の怒りに反応した、下位精霊の集まりだよ」
ユルドさんがそう答える。
事前に色々調べてあるだろうから、間違いではないと思う。
つまり、この下位精霊の集まりが、水の高位精霊に侵入者の事を伝えているという事かな。
「じゃあ、ここから……」
リュオに視線を向ける。
他のみんなの視線もリュオに集まる。
当のリュオは準備運動をしていた。
「一、二……三、四……よし、準備完了。持っていく箱はどれだ?」
ラロワさんがリュオに手紙の入った小箱を渡す。
「では、いってこよう」
リュオが竜の姿に戻る。
俺とヴィリアさん以外から、大きなどよめきが起こった。
確かに、迫力はある。
「素敵よ! リュオ!」
リュヒの声援にリュオはサムズアップで応え、羽を大きく羽ばたきながら飛び上がり、ヒュルム湖がある方向へと飛んでいく。
俺以外のみんなは喜色を浮かべ、リュヒと共に声援を送り出した。
これで解決だから、漸く喜べるといったところなんだろう。
そして、リュオが向かう先から水色のレーザーが照射。
リュオに命中し、撃墜される。
森の中に落ちたリュオは、津波のような水の奔流に押し流されながら戻ってきた。
まるでそう調整したかのように、俺たちの前でとまる水浸しのリュオ。
レーザーが当たった箇所はどこかわからないが、貫通はしていない模様。
強化水鉄砲みたいなモノだったのだろうか?
もしくは、リュオの鱗装甲が頑丈だったか。
今は身も心も竜だしね。
『………………』
ただ、誰も何も言わない。
リュヒですら、リュオから視線を外している。
リュオはゆっくりと立ち上がり、深く息を吐く。
「ふぅ~………………殺ぁってやるわ!」
力強く叫んで、再び飛翔。
勢いよく、ヒュルム湖の方に向かって飛んでいく。
……というか。
「殺っちゃ駄目なんじゃ」
「そうだ! 駄目だ!」
ラロワさんがそう叫ぶのと同時に、こちらは慌て出す。
駄目だ! と叫んでも届いているとは思えない。
すると、リュオに向けて、再び水レーザーが照射される。
「甘いわっ!」
そんなリュオの叫びが聞こえたかと思うと、空中で回転しながら水レーザーを回避。
「ハハハハハッ! 馬鹿め! 一度食らったモノを再び食らう我ではないわ!」
空中で羽をはためかせ、ホバリングしながら嬉しそうにそう叫ぶリュオ。
その叫びが聞こえたかどうかはわからないが、再び水レーザーが照射。
リュオは器用に避けるが、今度は連続照射だった……が、これも避ける。
「ハハハハハッ! 連射してきたところで、どうという事はない!」
リュオは嬉しそうだ。
こちらも歓声を上げ、リュヒも手を叩いて喜んでいる。
だが、カチンときたんだろう。
次第に連続照射の間隔が狭まっていき、リュオは無口に。
余裕は全然見えない。
最終的には弾幕のような面攻撃の水レーザーに撃墜され、繰り返しを見るかのように、リュオは津波に乗って戻ってくる。
『………………』
誰も、リュオにかけられる言葉を持っていなかった。




