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コンビニ

鈴木さんや月野さんと過ごした文化祭も終わり、息を吐く間も無く来週にはテストが始まる。

私は外の空気を吸ってリフレッシュしようと、テスト勉強を一休みして散歩をすることにした。

夜の10時を過ぎたぐらいの外は暗く静かで、空気が冷たくて肌寒い。

でも、私はそんな肌寒さがなぜか心地よくて好きだった。


私はコンビニに入る。

特に買う物もないけど、店内の明るさに導かれた。

店内をぐるっと回って、甘いものでも買っちゃおうかな、なんて思っていた。

その時、大きめのカップ麺を手に取り吟味する背の高い少女が目に止まる。

私はその人物に見覚えがあった。

月野さんだ。

「あ、可憐。」

そうやってまじまじと見ていたら、向こうも私に気がついて声をかけてきた。

「あ、うん。」

「なんで嫌そうな顔するんだよ。」

「別に嫌ってわけじゃないよ……ただ、すごいテキトーな格好だから……」

私はデニムパンツにスウェットでボアジャケットを羽織り、足元はキャンパス地のスニーカー。

部屋着ではないけれど、かなりラフな格好で、誰かに、特に月野さんと会うなら絶対にしない服装だ。

「そうか?それでも可憐は可愛いと思うけど?」

「わ、私じゃなくて服だって……」

急にそんなことを言われて、思わず俯いて前髪を触ってしまう。

「ていうか、こんな時間にカップ麺食べちゃうの?」

私は照れ隠しするように話題を変えた。

「予備校帰りだから、夕飯にね。」

「それがご飯?体に悪くないの?」

月野さんは「うん」と頷くだけでそれ以上は何も話してはくれなかった。

「じゃあ、会計してくるから。」

「う、うん。外で待ってるね。」


「お待たせ。」

会計を終えた月野さんに声をかけられる。

「この辺に住んでるの?」

「うん。テスト勉強の息抜きに散歩してたんだ。」

月野さんは「そっか。」と興味なさそうに返事をする。

「こんな偶然あるんだね。」

「あーごめん、そろそろ私帰らないと。」

私のあざとい台詞に月野さんは困った顔を向ける。

「あ、ごめんね。引き止めちゃった。」

「じゃあ、私こっちだから。」

月野さんは私の家と反対の方を指した。

「私は……こっち……またね。」

「うん、また。」

文化祭で少し縮まったように思えた距離も、それっきりだったから、少し離れちゃったのかもしれない。

それに今日の月野さんからは少しピリついたというか、ナーバスな印象を受けた。

私は遠ざかっていく月野さんの後ろ姿を見ている。

すると、なんだかいてもたってもいられなくなって、彼女を走って追いかけた。

「月野さん!」

「うわ!何?」

私が背後から叫ぶように声をかけると、月野さんは驚いて声を上げた。

「普段のお昼ってどうしてるの?」

「え?学校のある日は購買でパンを買って食べてるけど……」

月野さんは不思議そうな顔をした。

「わかった。明日は購買に行かないでね。教室で待ってて。」

「なんで?」

「いいから。じゃあ今度こそまたね。」

「あ、うん。」

私は走ってその場から立ち去った。

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