覚悟
りきと佐藤さんはいつからキスをしているんだろう。
あの様子だと、初めてではないことは確かだろう。
僕はずっとりきのことが好きだったのに、それを奪われたように感じて憤る。
でも、ずっと好きだったのに、その気持ちを伝えずに友達のままでいることを選んだのは僕だ。
一番の親友と言われた、あの時に、キスをしていたら。
もしかしたら今日、りきとキスをしていたのは僕だったかもしれない。
だけれど、りきが僕の事を受け入れてくれたとも限らない。
佐藤さんはそのリスクを負ったはずだ。
だから、佐藤さんを責めたり恨んだりするのはお門違いも甚だしい。
僕が弱かっただけだ。
そのくせ、正々堂々と自分の気持ちに向き合っているつもりになってた自分が情けない。
頭で分かっていても、りきが、大好きな人が、他の人を好きなのかと思うと心臓が引き裂けそうになる。
佐藤さんが来る前に戻れたら、そういくら後悔しても時間は戻ってくれない。
初恋だった。
だから、りきの初めても僕が良かった。
二人で恋人として、一緒に並んで歩いて行けたらと夢を見ていた。
これで諦められたら楽なのに、まだりきのことが大好きで苦しい。
だけど僕の心は決まった。
りきを取り戻す。
恋人になる。
きっと、成功しても一生この傷は残るだろう。
佐藤さんと比べられるのではないか、またりきの心が佐藤さんに行くのではないか、そうやってずっと僕を縛るんだろう。
もう取り返しのつかない事だとわかっている。
でも、それでも僕はりきが好き。
好きって言いたい。
好きって言われたい。
僕は涙を拭って、ベッドから起き上がる。
鏡を見ると酷い顔をしている。
あんまり得意ではないけど、時間をかけて化粧でカバーしなきゃ。
今日からりきに好きになってもらうために頑張るんだから。




