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お付き合い

朝、スマホのアラームで目を覚ますと、その画面にりきからのLINEの通知が来ていた。

急いで内容を確認すると今日の学校を休むという連絡だった。

最近、僕がりきの家の玄関の前で待っているから、連絡をくれたのだろう。

一緒に登校するようになったり、休む時に連絡をくれるようになったり、ほんの少しずつだけど、それも友達としてだけど、それでも関係が進展しているのが嬉しかった。

しかし、休む理由を尋ねてみても返信どころか既読もつかなかった。

僕は一人で学校へ向かった。


ついには昼休みになってもりきから連絡は返って来なかった。

ただ、いつに間にか既読はついていたから、メッセージは見てくれただろう。

気がかりなのが、佐藤さんも学校に来ていないことだ。

りきの休みと何か関係があるんじゃないかと思うと、心が落ち着かない。

りきは僕だけにじゃなく、みんなに優しい。

佐藤さんはその優しさに漬け込んで利用しているように僕には見える時がある。


「の子ちゃん、ちょっとお話してもいい?」

「え?うん。いいけど……」

クラスメイトに次の授業の宿題を教えながらそんな事を考えていると、クラスの早乙女さん声をかけられた。

「あ、もちろん先にお勉強済ませてからでいいよ。」

「分かった。少し待ってて。」


「ごめん早乙女さん、お待たせ。」

「はいこれ。」

そう言って早乙女さんは僕の机に袋を置いた。

その中には二人分のチョコチップメロンパンとジュースが入っていた。

「いつも鈴木さんに買ってきてもらってるでしょ?私も好きなんだぁ。」

僕が肯定すると、早乙女さんは前の席の椅子に座り、自分の分のパンを取り出した。

「飲み物は何が好きかわからなかったから、私の飲みたいものにしちゃった。好きな方選んで。」

袋に入っていたジュースはいちごミルクとりんごジュースだった。

早乙女さんはどうやら甘党のようだ。

「じゃあ、りんごジュースを貰おうかな。」

こんなふうに自分の机で誰かと二人で向き合って食事するなんて初めてだ。

「そう言えば話ってなに?」

「鈴木さんのことなんだけど……」

「え?りき?」

「うん。の子ちゃんって鈴木さんと仲良いよね?」

「もちろん!幼馴染だし!」

「あのね、鈴木さんって彼氏さんがいたり、誰かとお付き合いしてたりするのかな?って。」

「りきに彼氏なんて聞いたことないけど、なんで?」

変な質問に少し僕の語気が強くなる。

「鈴木さん、カッコいいなぁって。」

もじもじしながら答える早乙女さんに僕は内心頭を抱えた。

「じゃあ、佐藤さんともお付き合いしてないんだよね?」

「なんで佐藤さんが出てくるの?」

「だって、仲良さそうだし、佐藤さんって鈴木さんだけに態度違うし。それに二人とも背が高くて、カッコいい鈴木さんとスラっとしてて綺麗な佐藤さんがお付き合いしてたら私の入る隙はないなぁって思ったの。」

「そんな事ない!絶対!」

突然大きな声を出してしまった僕に早乙女さんが目を丸くする。

「の、の子ちゃん?」

我に返って周囲を見渡すと、クラス中が僕に注目していた。

「ご、ごめん。なんでもないよ。あはは……」

僕は誤魔化すようにジュースを一気に飲み干した。

「二人は付き合ったりしてないよ。りきはそういうのじゃないもん。」

早乙女さんはそういうの?と不思議そうな顔を一瞬したが、あまり気にせずに喋り始めた。


その後の話は覚えていない。

もしも、りきが佐藤さんと付き合っていたら。

もしも、りきが今日学校を休んだ理由がそれだったら。

悪い想像が頭の中を駆け巡って早乙女さんの声をかき消していた。

そういうのじゃない、そう言ったけど、なんだよそれ。

りきは誰かと付き合うような人じゃない、と僕は思う。

りきは女の子を恋愛対象として見ていない、と僕は思う。

でも、僕をそういう風に見てないだけで、他の女の子は違う可能性だってある。

僕はどんどん不安になってしまう。

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