居場所
私は今日も文化祭の準備の為、学校に残り、作業している。
学校行事への参加という正当な理由で家に帰らなくて良い事が、私にとっては都合が良かった。
鈴木と二人の時間だけは私の心は安寧を取り戻せる。
家や学校では常に気を張ってなければいけなかった。
誰かに心を許すことは許されなかった。
なぜなら、私は特別な人間だからだ。
しかし、鈴木だけは違った。
周りから浮いた派手な容姿と素行の悪そうな態度は、まるで周囲を威嚇しているようだった。
彼女もきっと私のように戦っているのだと思った。
彼女もきっと私のように特別な人間なのだと思った。
だから私は彼女に興味を持った。
それに、彼女は私を助け、連れ出してくれた。
特別な人間が孤独になるならば、特別な人間同士でそれを癒せばいいのだ。
私は鈴木の前では取り繕わずにいられた。
彼女もそれを受け入れてくれた。
彼女が私の唯一の居場所になった。
それなのに、今日の鈴木は早乙女に手を引かれて、他のクラスメイト数人の輪の中に入り準備を手伝っている。
早乙女は昨日、鈴木に助けられ、すぐに懐いたようだ。
だた、早乙女が執拗に話しかけているだけで、彼女らの輪に鈴木が馴染んでいるわけではない。
鈴木が急にクラスに馴染んで普通の人になってしまう事は無さそうだが、それでも二人だけの時間を奪われることに私は耐えられない。
私も一緒にクラスメイトたちの手伝いをするが、早く別々の作業にならないかとばかり考えていた。
結局、今日は最後まで二人っきりになることはなかった。
その後、20時過ぎに帰宅した私は、夕食を食べ始める。
その時、お父様が現れて、帰りの遅いことに不快感を隠せない様子で口を開いた。
「いくら文化祭の準備とはいえ、こんなに帰りが遅くなるまで残る必要があるのか?」
「行事は学校教育の一環でしょう。お父様はそれに参加するなとおっしゃるのですか?」
そう反論すると、お父様はもういいと立ち去った。
食事の準備をしてくれた山崎がまだそばにいた事もあり、口論を見られる事を避けたのだろう。
やはり、私の居場所は鈴木だけだ。




