甘えた声
次の日の放課後、今日も私は佐藤と二人で文化祭の準備を手伝っている。
佐藤が黙々と、そしてどこか楽しそうに作業をすることもあって、私たちは貰った画用紙を使い切り、17時前には落ち葉を作りを終えた。
最終下校時刻まではあと2時間もある。
「終わったし帰ろうか?」
「まだ帰りたくない。」
私の問いかけに佐藤は即答した。
「じゃあ、自販機で飲み物買ってきていい?喉乾いちゃった。」
「私も行く。」
そうして私たちは自動販売機へ向かった。
「ねえ、何が飲みたい?」
自動販売機の前に着くと佐藤が唐突に言った。
「は?」
「奢ってあげるわって意味よ。」
「急に怖いんだけど……」
「はぁ、じゃあいいわよ。せっかく機嫌良かったのに。」
佐藤はほっぺを膨らませて上目遣いで私を可愛く睨んだ。
「なんで今日は上機嫌なの?作業中も楽しそうだったし。」
「んー、そうね。あなたと一緒だからかしら。」
佐藤は飲み物を買いながら何事もないように言った。
「なに急に可愛いこと言い出すのよ。」
「照れ隠しでも嬉しいわ。あなたに可愛いって言われると。」
佐藤はそう言って私の目を見つめて微笑む。
「それはどうも。」
私は咄嗟に目を逸らす。
次の瞬間、佐藤が私に抱きついてきた。
「なんで目逸らすの?」
佐藤は甘えた声で私を問いただした。
「それよりこんなところで、誰かに見られたらどうするの。」
「別に私は困らないけど?」
佐藤はぎゅーっと腕に力を入れる。
「流石に私は恥ずかしいかな……」
「目を逸らした理由を教えてくれたら離れてあげる。」
佐藤が抱きついたまま顔を首筋押し付けながら話すので、息が当たってくすぐったい。
ねぇねぇとまた甘えた声で答えるようにせがんでくる。
まるで別人のようだ。
「分かった分かった。言うよ、言えばいいんでしょ!」
「ではどうぞ。」
「可愛いと思って照れたからです!これでいいでしょ!」
佐藤はぴょいっと私から離れる。
「引き剥がしてもよかったのに、優しいわね。」
「アンタ……」
満足そうに笑う佐藤に私は何も言い返せなかった。
私たちは教室へ戻った。




