再テスト
高橋先生の数学の授業中、いつもの癖で横を向くと、隣に座る佐藤の姿が目に入る。
鼻筋の通ったその横顔をしばらく眺めていると、私の視線に気がついたのか、佐藤と目が合う。
キスをしたあの日から、こんな風に目が合うと彼女は少し口元を緩めるようになった。
しかし、以前のようにすぐに視線を黒板に戻すし、それ以外は特に変わった様子もない。
私が気にしすぎているだけだろうか。
そんなことを考えていると、教壇の高橋先生がパンパンと手を叩く。
「じゃあ、今日の授業はこれで締めるぞ。」
そう言って、授業時間を15分も残して切り上げた。
「残りの時間は自習にするが、ワークの問題をやっておけ。次の授業はその解説から始めるから、終わらなかったら宿題だぞー。」
クラスの生徒たちは一斉に指定された問題集のページを開き自習に取り掛かる。
「おい鈴木、なにボーっとしてる。こっちこい、お前はこいつだ。」
そうして手渡されたプリントは、この前の小テストの再テストだった。
「終わったら俺の所に持ってこい。」
「わかりました。」
再テストの問題は数が半分で、難易度も少し下がっているように感じた。
土日に園田に教えてもらったおかげで私は比較的スムーズ問題を解けた。
全ての問題を解き終えて先生の所に持っていくと、先生はその場で採点を始めた。
「おいおい、少しレベルは落としてるとはいえ満点か……逆に感じ悪いぞ、お前。」
「いや、園田に見てもらったんですよ。つきっきりで。」
「ふーん、園田がねぇ。」
高橋先生は園田の方に視線を向ける。
「なんですか?」
「いや、別にいいんだ。この学園でお前みたいな奴が孤立しないなら俺は園田に頭が上がらないな。」
「私もです。」
「お前みたいなのが孤立するとドロップアウトするからな。そうすると担任である俺の査定に響く。」
冗談なのか本気なのか、先生は笑いながらそう言った。
「そっちですか。」
「ほら、もう戻って園田に結果を報告してやれ。それが世話になった奴の義務だ。」
「りき何点だった?」
先生に促されて席の方へ戻ると、園田は立ち上がって私に駆け寄った。
私は採点された小テストを園田に渡す。
「やったー!」
それを見て園田はぴょんぴょんと飛び跳ねて私に抱きついた。
「りき頑張ったもんね!」
「あ、ありがとう。」
まるで自分の事のようにはしゃぐ園田に少し照れながらお礼を言った。
「りき……」
それを聞いた園田は、腕に少し力を加えてむぎゅーっと抱きしめてくる。
「おーい、まだ授業時間なんだから静かにしろ。」
教壇から高橋先生に注意されて、園田は慌てて私から離れた。
すみませんと二人で謝って教室を見回すと、クラスメイトたちの視線が私たちに注がれていた。
そして、佐藤も顔をしかめて私を見ていたが、目が合うとふんっと顔を逸らした。
私は自分の席に戻った。
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