キスのあと
佐藤と教室に戻った私は、一直線に園田の方に向かう。
「あ!りき!おかえり!」
そう言って園田が立ち上がると、周りを囲んでいたクラスメイトたちが彼女に勉強を教わったお礼を言ってパラパラと散って行った。
「はい、パン。」
「いつもありがとう。」
園田は笑顔で受け取るが、その表情はすぐに少し気まずそうになる。
「えーっと……」
私の一歩後ろにいる佐藤にその視線は向けられていた。
「あ、あの……」
佐藤は何か言おうと口を開くが、言葉に詰まったように黙ってしまう。
「あーほら、1限目の英語の宿題があったでしょ?それをやるの忘れてて、咄嗟に逃げたら戻るタイミングが分からなかったらしい。ね?」
「え?」
誤魔化そうと嘘をつく私に佐藤が驚いた顔を向ける。
「ほらアンタも!」
私の後ろに立っている佐藤の肩を掴んで、彼女を強引に園田の前に突き出す。
さっきの事を詮索されると私も少し困る。
「園田さん……」
「なに?」
「心配かけて、ごめんなさい。」
そう謝って佐藤は俯いた。
「はぁ……もぉ〜しょうがないなぁ。佐藤さんまでりきに感化されて不良になっちゃダメだよ。」
園田はニヤニヤしながら言った。
「気をつけます。」
「私は不良じゃない。」
「えー、そうかなぁ。」
「ほら、早く食べないと授業始まるよ。」
園田は私の指摘にそうだったと手に持ったチョコチップメロンを大慌てで頬張る。
その小さな口元につい目がいってしまう。
「なに?」
園田が私の視線に気づく。
「あ、いや、唇にチョコついてる。」
「え?ほんと?」
園田が唇をペロっと舐める。
その動作はとても扇情的に見えて、私にキスを連想させる。
さっきのキス、そして、園田とのキス。
目の前の二人とのキスが思い浮かぶ。
顔を赤く染め、目を瞑る佐藤と園田の顔。
「取れていませんよ。」
佐藤がティッシュで園田の口元を優しく拭いた。
「ありがとう、佐藤さん。」
仲睦まじい二人を見て我に変える。
友達で何を考えてるんだ私は。
さっきのキスに引っ張られて少しおかしくなっている。
きっと、明日には普通に戻ってるだろう。
そういうことにして、これ以上考えないことにした。
言い訳ですが忙しくて更新なかなかできないです。
ごめんなさい。
今月はあと1回更新できるかどうか、という状況です。
8月はたくさん更新できるように頑張ります。




