表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/98

ファーストキス 2/2

そんなことをしているうちに昼休みの終わりを告げる予鈴の10分前になっていた。

「そろそろ戻ろう。」

「え?」

私たちは手を繋いだまま立ち上がる。

しかし、私が歩き出すと佐藤の手はするりと抜けた。

「ほら、行くよ。園田にもパンを届けなきゃ行けないし……」

俯いた佐藤は返事をしない。

「置いてくよ。」

そう言って歩き出すと佐藤に腕を掴まれる。

「後少しだけ……」

「あー、わかったよ。じゃあ5分だけ、それでギリギリだから。」

佐藤は腕を掴んだままこくんと頷いた。

「痛いからそろそろ離してほしいんだけど。」

「うん。」

素直に腕を離した佐藤は俯いたままだ。

再び私たちの間に沈黙が流れる。

「ねえ。」

ふいに顔を上げた佐藤は私に話しかける。

「なに?」

私が答えた瞬間、佐藤は私の肩を両手で掴みかかとを浮かせた。

そして佐藤と私の唇が触れ合った。

ほんの一瞬の短いキス。

「ちょっと、何してんのよ!」

私は思わず一歩後退りしながら叫んだ。

「何って、キスだけど?」

「そうじゃなくて……」

「ちなみにファーストキスだから。」

「私だって初めてなんだけど!」

「金髪なのに?」

佐藤は妙に嬉しそうな顔をして軽口を叩く。

「あーもう、うるさいわね。」

「あーあ、初めてはもっとロマンチックなのが良かったのに……」

「アンタがしたんでしょ……」

私が呆れてそう言うと、佐藤はクスッと笑った。

佐藤は私の前では良く笑う気がする。

普段からもっと笑えばいいのになと思った。

いや、私は何を考えているんだ。


「そろそろ戻りましょう。」

佐藤は歩き出しながらそう言った。

「あ、ちょっと!」

「置いて行くわよ?」

くるりとこっちを向いた佐藤の顔はまた笑っていた。

今度はどこか勝ち誇ったような満面の笑みだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ