ファーストキス 2/2
そんなことをしているうちに昼休みの終わりを告げる予鈴の10分前になっていた。
「そろそろ戻ろう。」
「え?」
私たちは手を繋いだまま立ち上がる。
しかし、私が歩き出すと佐藤の手はするりと抜けた。
「ほら、行くよ。園田にもパンを届けなきゃ行けないし……」
俯いた佐藤は返事をしない。
「置いてくよ。」
そう言って歩き出すと佐藤に腕を掴まれる。
「後少しだけ……」
「あー、わかったよ。じゃあ5分だけ、それでギリギリだから。」
佐藤は腕を掴んだままこくんと頷いた。
「痛いからそろそろ離してほしいんだけど。」
「うん。」
素直に腕を離した佐藤は俯いたままだ。
再び私たちの間に沈黙が流れる。
「ねえ。」
ふいに顔を上げた佐藤は私に話しかける。
「なに?」
私が答えた瞬間、佐藤は私の肩を両手で掴みかかとを浮かせた。
そして佐藤と私の唇が触れ合った。
ほんの一瞬の短いキス。
「ちょっと、何してんのよ!」
私は思わず一歩後退りしながら叫んだ。
「何って、キスだけど?」
「そうじゃなくて……」
「ちなみにファーストキスだから。」
「私だって初めてなんだけど!」
「金髪なのに?」
佐藤は妙に嬉しそうな顔をして軽口を叩く。
「あーもう、うるさいわね。」
「あーあ、初めてはもっとロマンチックなのが良かったのに……」
「アンタがしたんでしょ……」
私が呆れてそう言うと、佐藤はクスッと笑った。
佐藤は私の前では良く笑う気がする。
普段からもっと笑えばいいのになと思った。
いや、私は何を考えているんだ。
「そろそろ戻りましょう。」
佐藤は歩き出しながらそう言った。
「あ、ちょっと!」
「置いて行くわよ?」
くるりとこっちを向いた佐藤の顔はまた笑っていた。
今度はどこか勝ち誇ったような満面の笑みだった。




