ファーストキス 1/2
購買でパンとジュースを買って、私はあの茂みへ向かった。
茂みの中へ入ると案の定、佐藤はそこにいた。
「遅い。」
私に気がついた佐藤は顔をしかめて不満そうに呟いた。
「待ってたの?」
「別に。」
佐藤はぷいっと顔を背けた。
少し心配していたが、いつも通りの対応に安心する。
「はい、パンとジュース買ってきた。」
「あ、ありがとう……」
パンとジュースを差し出し、私は佐藤の隣に座る。
佐藤の座っていた石は2人で座るには少し狭い。
「ちょっと、狭いんだけど。」
「お尻が大きくてどうもすみませんね。」
私たちは特に何も話さずに食事を終えた。
佐藤との間に流れる沈黙に、私はいつのまにか気まずさを感じなくなっている。
そんなことを考えていると、佐藤が私の肩に頭を乗せてきた。
佐藤のサラサラした長い髪が腕に触って、少しくすぐったい。
「ねえ。」
突然話しかけてきた佐藤の方を向くと、彼女は上目遣いで私を見ていた。
「何も聞かないの?」
「うわ、めんどくさ。」
私の返答に佐藤は一瞬、むっと眉間に皺寄せた。
しかし、すぐにそうと言って肩から頭を離して元の体勢に戻る。
「ありがとう。」
少しして佐藤はまたふいに口を開いた。
「なにが?」
「別に。」
「なにそれ。」
私たちは目を見合わせて少し笑った。
佐藤が私の手を握る。
私はそれに応えるように握り返した。
すごく遅くなりました。
ごめんなさい。




