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ため息
私は思わず教室を飛び出した。
特に理由や目的はなかった。
衝動的に体が動いていた。
教室を少し離れた私の歩みは少しずつ遅くなって、ついには止まってしまう。
「どこに行こうかしら……」
そう呟いて考えを巡らせるが、思いつく場所は一つしかない。
私は登校してくる生徒たちの流れに逆らい、昇降口を出る。
そして、あの茂みへ向かった。
茂みの前に来ると転校初日のことを思い出す。
「別に期待してるわけじゃないわよ。」
言い訳をする様にそう言って茂みの奥へ入って行く。
茂みの中にほんの少しだけ広がる空間にあった大きな石に座る。
「冷たい。」
空間と言っても、前後左右と上空は草木に覆われていて薄暗い。
人が1人か2人入れる程度の広さだ。
「はぁ……」
私は大きくため息をついた。
膝を抱き寄せて小さくなり、ただ靴の先を見ていた。




