戻ってこない
気だるい月曜日の朝、なんとなく重い体を引きずって家を出る。
玄関の前には今日も園田の姿があった。
「おはよう!りき。」
「おはよう。」
朝から園田は元気だ。
私たちは二人で学校へ向かった。
「佐藤さんおはよう!」
「園田さん、おはようございます。」
教室に入ると佐藤と園田はいつものように挨拶を交わす。
「おはよう。」
私の挨拶に佐藤は眉をひそめた。
「おい。」
私は一歩佐藤の方へ踏み出そうとする。
するとガラガラガラっと音を立てて勢いよく椅子から佐藤が立ち上がる。
そして、佐藤はスタスタと歩き出し教室を出ようとする。
「ちょっと!どこ行くの?」
私の大声に教室のドアに手をかけた佐藤は立ち止まった。
そして、私の方を振り向く。
「お手洗い。」
「ご、ごめん。」
佐藤は何も答えず教室を出て行ってしまった。
佐藤はホームルームが始まる時間になっても戻ってこなかった。
昼休みの始まりを知らせるチャイムがなると、私と園田は顔を見合わせた。
園田は私の方へ駆け寄ってくる。
「りき、佐藤さん戻ってこないよ。」
私は立ち上がって頷いた。
「電話かけてみる。」
私はLINEを開き佐藤に電話をかけるが、すぐに佐藤のカバンの中からバイブレーションの音がかすかにするのがわかった。
「私が探してくるから、アンタは心配しなくていいよ。」
「でもっ——」
スマホをポケットにしまい、ぽんぽんと園田の頭を優しく叩いた。
「わかった。」
そう言った園田はしょうがないなと納得してくれた。
そうして佐藤を探しに教室を出ようとすると、私が離れた途端にクラスメイトに囲まれた園田が一瞬目に入る。
廊下に出た私は授業中に固まった体をググッと伸ばす。
「ふぅ……」
だらんと腕を落とすと肩が少し軽くなった気がする。
佐藤の行き先は大体想像はつく。
彼女はうちの学校に来て一月も経ってないのだから、行動範囲は限られているだろう。
だから、園田についてこられると少し困る。
それに佐藤も嫌がるはずだ。
購買でパンとジュースでも買ってから行こう。




