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親友のままで

「うん。これなら小テストはばっちりだね!」

りきが小テストの範囲をおおよそ完璧にできるようになり、僕たちは二日目の勉強を終わらせた。

小テストの再試験をパスするだけでなく、今後の範囲を勉強する上でもこれなら問題はない。

「やっと終わったぁ……」

そう言ったりきは脱力して床にねっ転がった。

「1学期の内容もほとんど覚えてたし、飲み込み早いし、りきって頭良いよね。」

「それは園田の教え方がうまいからでしょ。アンタに教わったら誰だってできるようになる。」

「えー、そんなことないよ。こんなにできるなら普段からちゃんと勉強すればいいのに。」

「それができたら苦労しない……」

床に伸びていたりきは上体を起こす。

「私に教えるの勉強になるんでしょ。アンタのために私は勉強しないでおく。」

りきは軽口を叩いて笑った。

「なんだとー!」

僕はりきに飛びついた。

「うそうそ!ごめんって。」

「ほんとーかー?」

りきは謝るが僕は攻撃の手を緩めない。

「ちょっと、どこ触って!」

「おりゃおりゃー!」

「こうなったら!」

「ひゃん!りきのえっち!」

「先に手を出したのはそっちでしょ!」


お互いに疲れ切って手を止めた時、僕は寝転ぶりきに覆い被さる体勢になっていた。

「はぁ……はぁ……ごめん、本当に感謝してる。」

「う、うん。わかってるよ、りき。」

お互いに乱れた呼吸を整えながら会話をする。

「今度、ちゃんと、お礼する。」

「昨日、甘えたからいいよ。」

僕は赤面しながら答えた。

「いや、そんなんじゃ釣り合わないでしょ。」

僕は首を横に勢いよく振ってそんなことないと否定する。

「じゃあ、今日も甘える?」

そう言ってりきは優しく微笑む。

りきの胸が少し大きな呼吸に合わせて上下に動いている。

僕は息を止めて頷いた。

「ほら、おいで。」

僕はりきの胸に飛び込む。

りきと僕の心臓は、早く大きく鼓動していた。

顔を上げると息を切らしてりきの顔が赤く染まっている。

りきの汗ばんだ首筋に、僕の汗が滴り落ちる。

キスしたい。

そんな情動がどうしようもなく湧き上がる。

僕の顔は少しずつ少しずつ重力に負けてりきの顔を目掛けて下がっていく。


「私の顔に何かついてる?」

「え?うんん。」

りきは顔の周りをぴとぴと触る。

その無邪気な動作にりきが僕を一番の親友と言った時のことがフラッシュバックする。

僕のその場で固まってしまう。

このまま勢いよくキスしちゃおうか、なんて一瞬頭をよぎったが僕の体は動かなかった。


「ん?どうした?」

その場で固まる僕にりきは不思議そうに話しかける。

「もしかして遠慮してる?」

そう言ったりきは突然、僕の事を抱き寄せた。

僕の顔は再びりきの胸元に沈んでしまう。

りきの鼓動は落ち着きを取り戻していた。

りきの鼓動が跳ねていたのも、呼吸が乱れていたのも、赤面して汗ばんでいたのも、さっきまで暴れ回っていたからだ。

僕のそれとは理由が違う。

冷静になれば当然にことだった。

「最近やけに甘えるけど、なんで?」

僕の頭を優しく撫でながらりきは問いかけた。

りきのことが好きだからなんてとても言えない。

りきにとって僕は友達なんだ。

「やっぱり、私が負担かけてるからだよね。勉強もそうだし佐——」

「そんなことない!」

再び僕は顔を上げ大きな声で否定する。

すると、りきは上体を起こし、僕もそれに合わせて起き上がった。

僕たちは向かい合って座った状態になる。

「やっぱり、今度ちゃんとお礼する。」

まっすぐ僕の目を見つめてりきはそう言った。

「うん。わかった。」

そう答えるとりきは僕の頭をもう一度撫で始めた。

「本当にありがとう。」

「うん。」

頭の心地よい感覚に僕はまだ親友のままでいたいと思った。

遅くなってすみません。

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