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キスできちゃいそう

カーテンの隙間から入る日差しと鳥の鳴き声に目が覚める。

まぶたを擦って目を開けるとすぐそこにりきの顔があった。

こっちを向いて目を閉じている。

一瞬、ドキっとしたけど、一度呼吸を整える。

昨日は1日りきと勉強して、そのまま一緒に寝た。

だからりきの顔が目の前にあるのは当たり前。

「りき、おはよう。」

恐る恐る小声で囁くが、りきが起きる気配はない。

僕はりきの顔にかかった髪をそっと退けた。

髪の毛で隠れていた口元が露わになって僕は生唾を飲む。

誰かの顔をこんなにも近くで見るのは初めてだ。

メイクをしていないりきの寝顔はいつもより小さな頃の面影を感じさせ懐かしかった。

りきの顔はどんな顔でも好きだ。

前から分かっていたけど、僕がりきに寄せる好意は恋なんだと改めて実感する。

心臓の鼓動が大きく早くなっていく。

ドクンドクンと音が聞こえる。

今ならキスできちゃいそう。

僕はさらに顔を近づける。

りきの寝息が顔にかかってくすぐったい。

「…………」

しばらくりきの瞑った目を見つめた僕はそのまま顔を離した。

キスはしなかった。

きっとこれはズルだ。

それに、寝てるりきとキスしても意味ない気がする。

はじめてのキスはとっておこう。

こんな僕とりきがキスしてくれる日が来るなんて思うのはお花畑なのかもしれない。

でも僕はりきと、何より自分自身の気持ちと正々堂々と向き合うって決めたんだ。

だから、今はキスはしない。

「でもこのくらいならいいよね……」

僕はりきの指に自分の指を絡めて手を握った。

いわゆる恋人繋ぎだ。

しかしその時、んーと唸ってりきが目を覚ます。

「ごめんりき、起こしちゃったね。」

「今何時?」

僕は上体を起こして時計を見る。

「もう7時すぎだね。そろそろ起きて朝ごはん食べよっか。」

繋いだ手を離して、ベッドから完全に起きあがろうとすると、りきが僕の腕を掴んだ。

「後ちょっと……」

そう言ったりきに引っ張られた僕はそのままベッドに引きずり込まれる。

「りき力強すぎ。」

「アンタが軽すぎるだけ……」

そしてりきは僕の手に指を絡めて手を繋いでくれた。

「え、りき?」

りきは何も言わず、再び目を瞑った。

そしてスースーと寝息をたてはじめた。

「りき寝ぼけてるの?しょうがないなぁ。えへへ。」

僕は繋いだ手を握り目を閉じた。

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