園田の子
月野はじめ、私はその名前を見つけて小さくガッツポーズを決めた。
全国模試の成績優秀者の名前一覧、その22位に自分の名前があった。
前回よりもかなり順位が上がっている。
しかし喜んだのも束の間、私は12位に書かれた名前を見て眉をひそめる。
園田の子、私はその名前に見覚えがある。
私と同じ橘学園で1年C組の生徒。
そして、学校の廊下に張り出される定期テストの成績優秀者の表には常に満点でトップとして掲示されている生徒だ。
逆に言うと、それ以外は全く知らない。
顔も見たこともない。
しかし、私は彼女をライバル視している。
私は第一志望の県内トップの公立高校に落ちて滑り止めとして受けたこの学園に入ったのだ。
偏差値60代前半の橘学園と志望校では10以上も偏差値の差があった。
そして、私学ゆえに推薦や帰国子女枠など様々な入試方式を持つこの学園の中では学力はトップクラスだ。
そう、トップクラス。
トップじゃない。
常に2位。
そして1位に君臨する名前が園田の子。
今回の模試でも数点の差だが負けた。
しかし、解ける問題は全て解けている。
園田の子が偏差値の差を出すための解けない問題でも私より点数が付いている事を意味している。
この数点の差は大きい。
「あー、もう!」
思わず声を出すと周りの視線を一斉に集めた。
ここが予備校の自習室であることを私は完全に忘れていた。
「す、すみません……」
私は顔を真っ赤にして小声で呟いた。
これも園田の子のせいだ。




