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宣言布告
僕は佐藤さんと握手をした。
仲直りの握手だけど、僕にとってはそれだけじゃない。
一度僕の中で区切りをつけて、気持ちを整理した。
そんな必要はないのかもしれない。
本当はりきと一緒に過ごしたいのに、クラスメイトの頼まれごとを断れない。
今回もりきの優しさに甘えたまま、お揃いのストラップを佐藤さんに見せつけていても良かった。
でもそれにどこか引っかかって、迷っていた僕がいたのも事実だ。
他の子のことなんて気にせずに、りきと自分のことだけ考えればいいのに。
そんな僕は馬鹿だと思う。
でも、りきは僕が他の子に嫌われて欲しくないと言ってくれた。
だから今はりきにそう言ってもらえる馬鹿な僕のままでいよう。
そう決心して佐藤さんの分のストラップも買った。
そして今日、ストラップを渡して佐藤さんに謝った。
これで僕は清々した気持ちでりきと向き合える気がする。
だからこの握手は僕に取っては宣戦布告の握手だ。
「佐藤さん、僕負けないからね。」
「そうですか。」
握る手に少しだけ力が入る。
きっと意図は伝わったと思う。
僕は僕の筋を通した。
僕は正々堂々戦う主義だからね。




