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タピオカ

「最後はタピオカ飲みたい!」

買い物を終えた僕はそう言ってりきにタピオカミルクティーのお店に連れて行ってもらう。

「ドリンクはどれにしますか?」

僕は店員さんに促されてメニューを見るが、よくわからない。

「えーっと……あれ?タピオカって——」

「まずは飲み物を選んで。その後にトッピングするんだよ。」

「あ、そうなんだ。じゃあウーロンミルクティーのSサイズ。」

「次は甘さと氷を選んで。」

「え?んー……」

僕はチラッとりきに視線を向ける。

「普通と有りでいいと思う。」

りきは視線の意図をすぐに察して答えてくれる。

「私も甘さは変えた事ないし、今日は暑いから。」

そう言ってりきは優しく笑う。

りきの助けもあって無事に注文を終えることができた。

二人でソファーのようになっている席に座って注文の完成を待つ。

「久しぶりに来たけど、もう結構空いてるんだね。」

「昔は凄かったの?」

「数十分並ぶこともあったからね。私はあんまり並ばなかったけど。」

そんな話をしながら、りきとお揃いの小さなショッパーを眺める。

中に入っているストラップもお揃いだ。

嬉しい気持ちに浸っていると、番号が呼ばれる。

りきが立ち上がろうとするが、僕はそれを止める。

「僕が取って来るよ!りきは座ってて。」

「うん。ありがとう。」

小走りで戻ってりきの隣に再び座る。

「はい、りき。」

「ありがとう。」

りきにありがとうと何度言われても嬉しい。

りきは勢いよくストローを刺してタピオカミルクティーを一口飲む。

僕もタピオカミルクティーにストローを刺す。

「うわぁ!」

その途端、ストローを刺した部分から中のミルクティーが溢れ出す。

手もテーブルもベタベタになってしまった。

「拭くもの取って来るから待ってて。」

そう言ったりきは紙フキンを取ってきてテーブルを拭いてくれる。

「ごめん、良くそうなるんだ。先に言っておけばよかった。」

「うんん。僕が不注意だっただけだよ。ごめんね、りき。」

りきは優しい。

今日はりきの優しさに甘えっぱなしだ。

りきの優しさに付け込んで振り回してる佐藤さんに怒ってたけど、僕も結局同じ事をしているのかも知れない。

そんな事を考えながらりきが取ってきてくれた紙フキンで手を拭く。

「だいぶ溢れちゃったし、私の少し飲む?味はアールグレイだけど。」

そう言って一口だけ飲んだタピオカミルクティーを差し出してくれる。

りきは優しい。

でもその優しさが今はチクリと胸を刺した。

僕は呼吸を整えて心の中で一つ決意を固めた。

「ありがとう、りき。」

一口飲むと、甘いお茶と一緒にタピオカが勢いよく口の中に入って来る。

僕にとって初めてタピオカミルクティーだった。

「りき、これすごく美味し——」

美味しいねと言いかけて僕は思わず動きが止まる。

これって関節キスじゃん。

「ん?」

その場で固まる僕の顔をりきが覗き込んで来る。

「あ、ありがとう!美味しかった!」

僕は思わず赤面してタピオカミルクティーをりきに突き返しす。

「それならいいけど。」

そう言って不思議そうにするりきがストローに口をつける。

「あぁ……」

そうして僕はますます赤面する。

顔が触らなくて分かるぐらい熱い。

そのあと飲んだ自分の分のタピオカミルクティーの味はほとんど分からなかった。


「りき、もう一度あのストラップのお店に戻っていい?」

「いいけど、忘れ物?」

「そんなとこ!」


買い物を終えた後、りきは僕を家の前まで送ってくれた。

と言っても、お互いの家はすぐそこだけど、最後まで一緒にいてくれた事が嬉しかった。

「りき、今日はありがとう。」

「どういたしまして。」

「りき、あのね、僕はこのストラップ、学校のカバンに付けようと思うんだけど……」

「なら私もそうしようかな。」

「うん!」

「じゃあまた明日、学校で。」

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