寝落ち通話
「今日は疲れちゃったなぁ……」
そう言って湯船で天井を見ながらため息をついた。
今日はりきが学校に来なかった。
いつも通りクラスのみんなの相手をして、お昼ご飯は佐藤さんが買ってきてくれたけど、やっぱりりきが買ってきてくれるのとは違う。
その後も掛け持ちしてる予備校2つで講義と映像授業を受けた。
いつも通りだけど、りきに会えないだけでこんなに疲れるなんて。
お風呂を上がり、明日の支度を済ませてベッドに横になる。
「りき、明日は学校来てくれるよね……」
もしも明日も学校に来なかったら、そう思うと居ても立っても居られなくなる。
前にも1度りきが学校をサボったことはあったけど、こんな風には思わなかった。
そもそも今日はなんで休んだんだろう。
前のように特に理由のないサボりだったらいいんだけど。
僕は枕元のスマホを手に取ってLINEを開く。
一瞬、夜遅くに迷惑じゃないかと思ったけど、そのまま音声通話をかけた。
23時半を過ぎたぐらいの時間だったが、りきはすぐに電話に出た。
「もしもし、夜遅くにごめんねりき。」
「いや、昼間寝過ぎて寝れなかったし。」
「そっか。」
「どうしたの?」
「それはこっちのセリフ!今日どうして学校来なかったのさ!」
「あー、まあ眠かったから。大した理由はないよ。」
「それならいいけどさー。」
「いいのか。」
僕はその言葉を聞いて安心した。
もちろん、病気とか怪我とかじゃなくて。
でも、それだけじゃない。
なんだかりきが遠くに行ってしまう気がしたから。
今日学校であったことやくだらない世間話をしていたら、日付が変わっていた。
思わず僕はあくびをする。
「眠いならそろそろ切ろうか。」
「ヤダ……」
りきが優しい声で言った提案を僕は呟くように拒否した。
「このまま寝る。」
「なにそれ、別にいいけど。」
「りき、あふぃあろう。」
ありがとうとあくびが重なってしまう。
それを聞いたりきは声を上げて笑った。
「もー、笑わないでよ!」
恥ずかしさのあまり一瞬で体が熱くなった。
「ごめんごめん、こっちこそありがとう。」
「え?」
「電話くれて嬉しかったよ。」
「あ、うん。」
「ほら、寝るんでしょ?おやすみ」
「おやすみなさい、りき。」
その後も少し話していた気もするけど、よく覚えてない。
4時頃に目が覚めてスマホを見るとまだ通話は繋がったままだった。
「りき……」
頬が緩んだ。
僕はそのまま再び目を閉じた。




