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佐藤
転校生が私の方に向かって歩いてくる。
その歩き方は妙に堂々としていて、とても転校初日の女子高生には見えない。
もっとオドオドしても良さそうだけど、これが普通なんだろうか。
そして、転校生が席につくと、担任の高橋先生はホームルームを切り上げてさっさと出ていってしまった。
ホームルームをパパッと終わらせることはいつも通りだが、流石に転校生まで隣の席の私に丸投げするとは思ってもいなかった。
「鈴木さん。」
そんなふうに思っている矢先に、転校生に声をかけられた。
「佐藤いみです。よろしくお願いします。」
「あ、うん。」
とっさに気の抜けた返事をしてしまったが、その後の会話が続かない。
佐藤はそれを気にするような素振りを見せなかったが、私は沈黙に耐えられず机に突っ伏した。
ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴るまでの数分間、それはいつもよりもずっと長く感じられた。




