特別な事
私と鈴木は校門で横並びになって車の到着を待つ。
下校する生徒たちがこちらを横目で見てくる。
「鈴木さんと一緒にいる子だれ?」
「関わらない方がいいよ、行こ。」
そんな話し声も聞こえてくる。
どうやら鈴木はクラス外でも有名なようだ。
車が到着し、運転席から山崎が降りて私たちの所まで来る。
「紹介するわ。山崎、我が家の使用人よ。」
私は身を翻して鈴木と向き合い、山崎を紹介する。
「お嬢様のご学友の方ですね。私は使用人の山崎と申します。」
「あ、鈴木です。」
「先般はご挨拶も出来ずに申し訳ございませんでした。」
「いやそんな……」
「山崎、今日は彼女も乗せて。」
「かしこまりました。」
山崎は後部座席のドアを開けた。
「お足元にお気をつけ下さいませ。」
「ほら、早く。」
「あ、うん。」
鈴木は戸惑いながらも車の中へ入っていった。
私も車に乗り込む。
その時に見えた遠目から私たちを見る学生の姿に、私は優越感を覚えた。
もちろん、自分が運転手付きの高級車で送迎されるような身分であることについてではない。
私と鈴木の関係を見せつけているようだったからだ。
大した関係ではないが、それでも彼女と友達と見られる関係はこの学校の中で特別な事に思える。
そして何より、私にとっても特別な事だ。




