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カシイチ

ホームルームが終わって放課後になると、佐藤はスマホをを取り出す。

誰かに連絡をしているようだ。

「誰に連絡してるのー?もしかして彼氏?」

「私に彼氏はいませんよ、園田さん。」

佐藤は園田をたしなめてからこっちを見てくる。

「え、なに?」

「車を呼んだのよ。高橋先生が車が停まってると近所迷惑だから今度からはそうしろって。」

どうやら昨日の人だかりは迎えの車によるものだったらしい。

まあ、想像はついていたけど。

「それと、彼氏はいないから。」

「あ、うん。」

「りき!りき!僕も彼氏いないよ!」

「それ、なんのアピール?」

競うように自分たちの恋愛事情について語る二人に私は困惑する。

「あ!そろそろ行かないと、予備校に遅れちゃう!りき、行こう。」

「えーっと……」

佐藤をこのまま置いて行っていいものかと思い、佐藤の方に目を向ける。

「ちょっと話があるんだけど……」

「私に?」

佐藤は黙って頷く。

「りきに話って何?」

そこに園田が割って入る。

「それは……」

佐藤はそのまま黙ってしまう。

「まあ、ここで話しにくいならいいよ。私はどうせ暇だし。」

「ごめん。」

「えー!じゃあ僕ひとりで帰るの?」

「どうせそこのバス停ですぐ別れるでしょ。」

「そういうことじゃないの!」

園田がそう言ってむくれるので頭を撫でてなだめる。

彼女は少し子供っぽいところがある。

「あー!りきがまた子供扱いしたー!」

更に腹を立てたのか顔を真っ赤にして園田は叫んだ。

「うぅ、仕方ない。佐藤さん、これカシだからね!カシイチ!」

「は、はぁ。」

佐藤にビシッと指をしてそう言った園田は、頬を抑えながら走って教室を出て行った。

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