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教科書のコピー

「事情は聞いてる。座りなさい。」

鈴木と二人で教室に戻ると教壇の先生からそう言われた。

私たちは先生に軽く一礼してから自分たちの席の方まで歩いて行く。

転校2日目の私が学校で浮くほどのギャルと一緒に呼び出されていたのだから、他のクラスメイトたちから好奇の目を向けられる。

しかし、気まずさは感じない。

むしろ、なにか優越感にも似たものを覚える。


自分の机の前まで来た私は、机を隣の鈴木の机につけるために動かそうとする。

まだ教科書が届いてないから、鈴木に見せてもらうためだ。

しかし、前から伸びた手に机を押さえられる。

「佐藤さん、なにかいい事でもあったー?」

「いえ、あの、園田さん?」

「これ教科書のコピー。今見るべきはコピーの2枚目。摩擦のページ。」

困惑している私に彼女は半ば押し付けるような形で教科書のコピーを渡してきた。

「あ、ありがとうございます。」

「あれ?何か不満?それなら偏差値70の僕がりきのために作った超わかりやすいノートも貸そうか?」

「いえ、それは大丈夫です。」


私は席について教科書のコピーに目を落とす。

マーカーが引かれ、メモ書きのついた教科書から彼女の勤勉さが伺える。

普段の態度からは想像しにくいが、彼女はかなりの勉強家のようだ。

そして、教科書の文にアンダーラインを引き、「りきがつまずきそう。公式の意味を説明。」とメモ書きされていた。

鈴木の事もよく分かっているようだ。

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