高橋先生
先生は私たちの食い違う主張を聞いて、うーんと唸る。
「こうなるとどっちが本当か分からんな。」
そう言って肩をすくめてポーズを取る。
「しかしまあ、友人関係を学校が引き離すのはやりすぎだ。だから元からそんなことをするつもりはなかったが、今回の件は保留だな。」
その言葉に私は安堵する。
「だが、そもそも校則で寄り道自体が禁止だ。そこまで厳格に守られてはいないが、俺の立場からはそう言わせてもらう。」
「すみませんでした。」
私は先生に頭を下げる。
「それに、もし鈴木に無理矢理連れ回されてるならいつでも相談しろよ。」
「はい、そうさせていただきます。」
「さっきと言ってること違くない?」
鈴木の指摘を私は無視した。
「そうだ佐藤!」
職員室を出ようとした時、先生に呼び止められた。
「もう一つ苦情があった。近隣の住民さまからのだ。」
「私にですか?」
「いや、お前んちの車にだ。いくらうちが私学だからってお嬢様学校ってわけじゃないんだ。」
「はい。」
「交通の邪魔だし、人だかりができてうるさい。」
「それはそうですね。」
「だから今日からはお前が帰るときに連絡して車を呼ぶように。お前のオヤジさんにも言ってある。」
「ありがとうございます。」
「わかったらもう戻れ。授業始まってるぞ。」
そう言って先生は俺も授業だったと走って職員室を出て行った。
高橋先生はああ見えていい教師なのかもしれない。




