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寄り道

私たちは電車に乗り隣町のカラオケボックスに来ていた。

ここに着くまでの間、私たちに会話はなかった。

鈴木は何も聞いては来なかったのだ。

しかし、私はそれが嬉しかった。

「ドリンクは?」

「え?」

「ワンドリンク制。いいから選んで、私はメロンソーダ。」

「じゃ、じゃあ私もそれで。」

突然、受付で話しかけれられた私は慌てて返事をした。

私は今までカラオケに来たことがない。

その事を鈴木に隠そう思っているわけではないが、自分から話すことでもないだろう。


「ねえ、もしかしてなんだけどさ。カラオケ来たことない?」

エレベーターに乗り二人きりになると、鈴木にそう指摘された。

「すごくぎこちないから、キョロキョロしてるし。」

「ワルかったわね。」

「いやワルくないけど。」


部屋に着くと鈴木は私に機械の操作を教えてくれた。

「で、ここをタッチすると予約される。」

「こう?」

ボタンを押すと画面が切り替わり曲のイントロが流れ出す。

「ほら、これマイク。」

「え、うん。」

マイクを渡され、私は歌い始める。

その時、部屋の扉が開き店員が入ってきた。

ドリンクを持ってきたのだ。

注文を届に店員が入ってくる事は、考えれば当たり前だが、カラオケが初めての私にはそこまで思考が及ばなかった。

他の人に見られるとは思ってもみなかった私は、思わず赤面し硬直する。

「ふふ……ふふふ……あははははは!」

店員が部屋を出た後、震えて笑いを堪えていた鈴木はダムが決壊したかのように笑い出す。

それを見て私の羞恥心はますます膨らむ。

「わ、ワルい……ふふふ……つい……」

声を震わせながら謝る鈴木はすぐにまた大声で笑った。

「そんなに間抜けだったかしら?」

「うんすごく。それに、マイク使って怒ってる今の姿も。」


私は勝てないと悟りソファーに座りドリンクを飲む。

「んっ!」

私は思わず声を上げる。

「どうした?」

「甘すぎる。これが好きなの?」

「えー、美味しいじゃん。」

「確かに不味くはないけど、」

「けど?」

「子供っぽい。」

反撃のつもりだったが、その態度の方がよっぽど子供っぽいと気付き恥ずかしくなった。

もう今日は変に気を張るのはやめよう。


その後、私たちは交互に歌ったが、お互いに曲の趣味は全く合わなかった。

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