高級車
りきと転校生が僕の少し後ろで向き合って立ち止まっているのに気づいた。
声をかけても用事があると言い出して、二人は校門とは反対への方へ歩いて行く。
手を繋いで。
どんどん進んで行く二人は校舎裏へ向かっているみたいだ。
でも、校舎裏には文化部の部室棟とビオトープぐらいしかない。
二人がそんな所に用事があるはずない。
転校生の部活動見学だとしても、りきがついて行く理由もないし、第一りきはそんなことしない。
ビオトープで亀でも二人で眺める?
なにそれ、それも絶対にない。
立ち止まって考えていても仕方ないし、予備校に遅れちゃうから歩き出す。
校門まで着くと全部分かった。
真っ白な外国製の高級車が止まり、年老いた如何にもな男性が誰かを待っている。
これが人だかりの原因だったんだ。
こんなこと今まで一度も無かった。
今までと今日の違い、それはあの転校生だけだ。
この車と男は転校生を待っているんだ。
転校生はこの車に乗りたくない事情があった。
だからりきを引き止めた。
りきはきっと「裏口」に行ったんだ。
りきは自分だけが知っていると思ってる、だけど僕も知ってる。
りきと僕だけしか知らない裏口。
りきが誰にも、僕にも話さなかった裏口。
疑問が解けたはずなのに、なんだか頭がモヤモヤする。
今日の予備校は授業に集中できないかも。




