12/98
裏口
昇降口を抜けて歩いていると、校門の方で人だかりができていた。
私には理由がすぐに分かった。
私は少し前を歩く鈴木の腕を掴んで、彼女を引き止める。
「え?なに?」
彼女は顔をしかめて私を訝しむ。
「痛いんだけど。」
責めるような眼差しに私は手の力を抜き下を向く。
そして、下を向いたまま私はつぶやいた。
「この学校って裏口とかないの?」
「は?」
「あっちに、行きたくない。」
少し黙った後に鈴木はわかったよとため息をついた。
「おーい!二人ともー!早くしないと僕予備校に遅れちゃうよー!」
少し先まで歩いていた園田が振り返って叫ぶ。
「ワルーい!用事があるから先に帰っててくれー!」
鈴木も叫んで返事をした。
「こっち。」
私の方に向き直ってそう言った鈴木は、今度は私の手を引いて歩き出した。
「裏口はないけど、こっちから出られる。」
そうして私たちは人だかりの方から遠ざかっていった。




