妹が音読で幼馴染をうめかせている
「おじゃましますーますますー」
遊園地マップを広げて色々想像していると、杏菜の声がした。
「お、明日の遊園地マップだわーい。万太準備いいね」
杏菜が「ただいまー」と言った感じでリビングに入って来て、僕が見ているマップを後ろから覗き込んでくる。
「お、もう音読の宿題終わったのか早いな」
「違うけどお兄ちゃん。今からここでやるんだよ」
杏菜の後ろから紙の束と音読カードを胸に抱えた妹が登場した。
「じゃあ明奈、音読どうぞ」
杏菜が妹の名前を呼び、テーブルのいつも僕が座っている席にすわる。
妹は向かいに座って書道の教科書の表紙にそのままなりそうなくらい完璧な姿勢で紙の束を適切な角度で建てて……。
音読が始まりそうなので隣の部屋に移動した。
静かな方が想像力が働くし。
でも、杏菜に音読の聴き役をやってもらってるっていうのは今更だけど申し訳ないな……。
そうだ。明日、遊園地でポップコーンでもおごるか……。うんそうしよう。
かすかに隣から妹の声が聞こえて来る。
そして何故か、杏菜のうめき声が聞こえて来る。もしや、やられる悪者役でもやらされてるの?
気になってちらっとドアを開けてのぞいて見たら、杏菜が机に突っ伏していていて、妹がこちらをドヤ顔で振り返った。
おいおい。何があったんだ? 暗闇の中を走るジェットコースターのごとく、全く予測もつかないぞ。