茶番のあとで
最後の杖、魔力の杖の作製が終わり、ついに15種類の全く異なる杖が揃った。これらの杖は、集めることでカギとなり、特殊なアクセサリー類を手に入れることができる。
スカイアドベンチャーが求めてきたものはまさにそれであり、その装備品がいまここにあることを、パーティーメンバーは素直に喜んでいた。
「これがフォースオブロッドか」
「これで魔法使いちゃんがまた強くなるんだね!」
「早速着けるよ!」
賢者の指環を外して、フォースオブロッドを装備する。効果は、賢者の指環よりさらに20上の、+50。
劇的な変化ではないが、確かにレベル7個分の強さが身に付いた。
だが、デメリットもあった。杖のちからという名の通り、杖を装備しておかないと効果が発揮されないのだ。
「短剣装備なら賢者付けといた方がいいね」
「まさか条件付きとは」
「こうなると、他の武器のフォースオブ何とかも欲しくなっちまうな」
というわけで、たまたま揃っていたが交換していなかった、銃と短剣のフォースアクセも手に入れる。どちらも特定の装備のときに、腕力が+50というものだった。知力が上がるのは杖だけなのかもしれない。
「杖装備可って我々でも取れたっけ」
「たぶん取れねーと思うけど、一応確認してくる」
ネット回線を開いて、先人たちの残した知恵を見に行く。ブックマークはしてあるので辿り着くのは簡単だ。その場所で賊が暴れまわっていなければ。
舟長は今日も静かな掲示板を横目に、早速目的のアビリティとそれが解放できるジョブを探しにいく。そして、あっ、と呟いた。
「ダメだ。ワーロックの次の次のうえ、オレたちじゃ資格がない」
「資格なしじゃ仕方ないな。残念だけど、ワーロックでしか装備する場面がないみたい」
「僧侶も杖装備できるよ」
「じゃあセイントとワーロックだけかぁ」
「本気だす時に役に立つよ、きっと!」
やや残念そうに言う魔法使いをアサシンが宥めている。珍しくもない光景だが、魔法使いの嘆きが正当なものであることが珍しい。
普段はもっと、なんかこう舟長が流れで死んだりするようなセリフばっかりなのに。ああ、可哀想な舟長。
「今日はまだ死んでない」
「じゃあ、一発、死んどく?」
「景気のよくない話ですね、それは」
「任せて」
「たまにはボクが一発でザクッと」
「助けて、パーティーメンバーがオレを殺しに来る!」
「おれはまだ何も言ってねーんだけどな」
その気になればいつも通り。逃げ場のない舟長はしくしく泣くしかない。
叡知の杖はできなかったし、また盗みに行かなくてはならない。どやされるのも時間の問題だ。やっぱり舟長は泣くしかないのだった。