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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
好感度マイナス
3/79

2

 母親が泣き止むのを待って服を選んで欲しいと伝えると、さっきまで鬼のように怒っていたのが嘘のようにご機嫌になった母親は一人のメイドを呼びつけた。


 呼ばれたメイドも俺を見ると悲鳴をあげそうになっていたが何とか耐えていた。叩かれたメイドより年上だったし、年の功ってやつか。


 メイドは母親に俺に服と髪を整えるよう言い付け、俺はメイドと一緒に部屋を出ようとする。



「ニベウス」


「はい」


「今日はルキウスが昼には実務を終えて帰って来る予定だから、久しぶりに三人で昼食をとりましょうね」



 部屋を出る寸前、母親は花が咲いたような可愛らしい笑顔でそう言った。

 ルキウスとは、父親の名前だろうか。

 俺は適当に相づちをうって部屋に戻ると、早速メイドに服を選んで貰った。


 胸元から腹にかけてヒラヒラした飾りが着いたシャツに青いズボンには金糸で花の刺繍がされていて、シンプルながら立派なお坊っちゃまコーデをしてもらった。髪は後ろに一つに結って、紫色の細いリボンで蝶結びにされた。



「ニベウス様、朝食はいかがなさいますか?」


「朝食?」


「いつも通り、お部屋にお運びいたしましょうか」



 朝っぱらから色々あって少し疲れたしな。

昼は親子そろって食べるみたいだし、朝は一人でゆっくり食べたいかも。



「じゃあ、それでよろしくお願いします」



 後ろでメイドが息を飲む音がしたが、直ぐに平坦な声で「かしこまりました」と言って部屋を出て行った。

 朝食が出来るまで部屋を散策してみたけどびっくりするくらい何もない。机の脇にある本棚には分厚い本が四冊あるだけで、すかすかだ。生前、本棚を漫画でぎっしりにしていた俺からすると寂しく感じる。

 ニベウス、本当にここに住んでたのか?


 取り敢えず一冊手に取って広げてみる。



「お、読める」



 見たことのない文字が連なっているけど、普通に読める。どうやら歴史の本らしい。

 言葉も普通に通じるし、読み書きには困らなそうだ。でも、それならニベウスの記憶が無いのは何でだ?

 何か、記憶喪失について語ったラノベがあったな。

 えーっと、確か....、人の記憶には色んな部屋があって、思い出を記憶するエピソード記憶と、知識を記憶する意味記憶があって、エピソード記憶が損傷すると思い出を無くすっていう。


 完全にイ〇デックス知識です本当にありがとうございました。


 他にも、一般知識はあっても思い出を忘れてしまうのを健忘?健忘何とかって言ってたよな?ワカンネ。こちとら普通の中学生だったんじゃ。記憶喪失の事なんか細かく分かるかよ。


 もし、ニベウスの身体が記憶喪失を起こしているなら、しばらくしてニベウスの記憶が蘇ったりするのかな?

 うーん....。メイド達の反応も気になるし....。昨日の母親も蘇生とか言ってたよな.....。

怪しい臭いがぷんぷんするぜ。


 取り敢えず、本を机におき椅子に座って読書をしてみる。やることなくて暇だしね。

 そして俺は気が付いた。机に、卓上ライトがある。


 なん....だと....?


 魔法のある異世界に、電気があるのか!?


 コンセントを探すがそんなものはなく、5つの花弁の花をモチーフにした卓上ライトがちょんと置かれているだけだ。


 これ、どうやって使うの?スイッチとかないじゃん。


 使い方が分からないなら眺めててもしゃーない。予定通り読書を始める。読むのに飽きて「読める、読めるぞふははは!!」ってム〇カごっこして遊びながら暇をもて余しているとメイドが朝食を運んできた。


 シングルサイズの丸テーブルにスクランブルエッグとかりかりに焼かれたベーコンにミニトマト、コンソメスープに白いふわふわのパン、添えられたバターにはハーブが練り込められていて朝から豪勢である。


 しかもめっちゃ旨い。


 こりゃ料理を開拓なんて出来そうに無いな。

 そもそも、俺料理とか出来ないし。


 朝食をゆっくりと堪能し、読書を再開する。が、やっぱり灯りが欲しい。

 今日は天気がいいから部屋もある程度明るいけど、机で本を読むとなると物足りなさを感じる。  やっぱりこの卓上ライトを点けるしか無いようだ。


 卓上ライトをまじまじと観察する。

 やっぱりスイッチは無い。ライト部分も見てみる。百合の花に良く似たグローブは真っ白てツルツルしてる。これはどんな素材なんだろう。中には黄色い宝石のような石が電球みたいにくっついていた。あれが光るんだろうか?


 好奇心で触ってみる。



「うわ!点いた」



 指先でてし、と触ったら石が光った。現代日本にある電球と何ら遜色のない明るさだ。


 え?どういう仕組み?


 もう一度触ると灯りが消え、また触ると点く。

使い方は分かったけど仕組みが分からん。



「ま、いっか」



 こちらも後で母親にでも聞こう。

 しかし、エピソード記憶とか意味記憶と言っといて自分家の家電の使い方が分からないってどういう意味だ?読み書きも言語も出来るなら卓上ライトの使い方くらい分かる筈なのに。


 そんな事を気にしつつ歴史のお勉強をする。すると案外頭に入ってくる、と言うより、一度やった事があると言う認識で入ってくる。ニベウスが読んだのからなのか、やっぱり知識の方の記憶が消えている訳では無いようだ。しかし、その記憶は本の数十ページを過ぎると全く無くなってしまった。

 どうやらニベウスはここから先は読んでいないらしい。

 少し読み進めて一度本を閉じる。


 疲れたから休憩。


 立ち上がって背伸びのストレッチ。あー真面目に勉強したわー、受験以来だから4日ぶりだわー。

俺、そんなに勉強好きって訳じゃないんだけどな。


 気分転換に外を眺めようと窓辺に立つ。屋敷の庭と門が見えた。

 遠くを眺めると教会のような高い建物がある事以外、他は民家が建っている事しか分からなかった。もう少し上の階なら眺めはいいんだろけど。


 ....暇だ。


 暇だから、屋敷を散策しよう。なんだったら庭の散歩でもいい。母親を誘ってみるか。



 思い付いたら即行動。

 母親の部屋に行きノックをして扉をあける。



「お母様、少しよろしいですか?」


「あら、どうしたのニベウス」



 母親は俺の部屋にあるのと同じ丸テーブルの椅子に座り刺繍をしている最中だった。

 今朝までの白いネグリジェではなく、淡いクリーム色のシンプルなドレスを着て、髪を整えハーフアップにしている母親は立派な貴族の奥方そのものだ。改めて見るとめっちゃ美人。ニベウスは間違いなく母親似だ。

 俺、今からこの人を散歩に誘うんだよな。親子だけど精神的に親と見れないから変に緊張してきた。誰だよこの人を親切なおばちゃんとか言ったの。俺だった。



「ニベウス?」


「あ、あの、今日は天気もいいし、お父様が帰って来るまで庭を散歩したいと思うのですが」


「あら、そうねぇ、今なら庭も色んな花が咲いて綺麗だと思うわ」


「よろしければ、お母様も御一緒に散歩をしませんか?」


「え?」



 俺の誘いに母親は一瞬ぽかん呆けたが、直ぐに嬉しそうな笑顔を浮かべて立ち上がった。



「まぁ!ニベウスが私と庭を散歩したいだなんて何年ぶりかしら!」



 子供のようにはしゃぎながら母親はメイドを呼び、日傘を持ってくるように指示を出した。


 これまでのやり取りから察するに、ニベウスは母親とあまりいい関係ではなかったようだ。見た感じ、ニベウスが一方的に母親と距離を置いてたように感じる。


 何?思春期だったん?俺と対して年変わらないみたいからそうだったのかな?

母ちゃんと買い物なんか行けねーよ!みたいな?


 分かるよ?俺も母さんが部屋に掃除しに入った時「勝手に入ってくんなババァ!」って言った事あるから。

 その後掃除機でぶん殴られたけどね。

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