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激甘

 年が明け、受験の日は刻々と近づいていた。


 あれ以来、前より格段に連絡を取るようになった。何回も会った。一緒に勉強しようと言いながら、結局喋るだけで終わることも増えた。付き合うタイミングを確実に間違えたと思ったが、それも覚悟してはいたことなので当時は特に後悔することもなかった。


 結論から言ってしまうと私は志望校に落ちた。終わってみれば当然の結果だった。私は受験を舐めていたようだった。決して十分寝勉強していたとは言い難かったし、今となっては滑り止めとして受けていた学校に感謝しかなかった。私なんかを入れてくれてありがとうと言う思いでいっぱいだった。


 一方で彼は第一志望の学校に合格した。特に部活もしていなかったこともあって四月から勉強してたのが功を奏したのだろうか。とにかく彼は受かった。


 自分だけが受かったために彼は少し負い目を感じていたようだったが、私は彼に何の恨みも持たなかった。私が落ちたのは間違いなく私のせいだから何も気にすることは無いと彼に何度も言った。事実そうだったし、無理に責任転嫁したところで何も生まないのは目に見えてた。それよりも私は彼との今後の関係の方が気になっていた。同じ学校に通えないことが不安だった。


 その事を聞くと彼は即答した。


「別に変わらないでしょ」


 その言葉が本当に嬉しかった。受験に落ちたことも、彼と同じ学校に通えないことも全てがどうでもよくなった。彼と付き合って正解だったと改めて思った。




 卒業式が終わってから学校が始まるまでしばらく時間があった。その期間を利用しない手はないと考えた私と彼は旅行の計画を立てた。二泊三日。場所はそれほど遠くはない。特に行きたい場所があるというわけでもなかった。ただ彼と一緒に旅行に行くというのがこの上なく楽しみだった。


 旅行初日は天気にも恵まれ、受験から解放されたことを改めて実感するとテンションは跳ね上がった。交通費をケチったために移動時間が想像以上に長かったが、それすらも楽しかった。やっとの思いで着いた目的地の場所はハッキリ言って行く前は全く興味はなかったのだが、いざ実際に見てみると熱中してしまった。彼も同じだったようで、呆気にとられながら言った。


「来てみるもんだなあ…」



 くたくたになった私はホテルの部屋に案内されるや否やベッドにダイブした。


「積極的」


 彼は私の荷物を抱えながら部屋に入ってきた。


「違う!」


 そう言ってすぐにベッドから飛び降りたが、彼は笑っていて聞こうとしなかった。重そうに荷物を下ろして一呼吸入れ直すと彼はでも、と付け加え私の方に向き直って言った。


「いい加減いい頃だよね」


 私はとっさに目を逸らした。それから小さく頷いた。


 シャワーを浴びて、しばらくテレビを見ながら談笑してたが気付けばテレビの音は消え、私と彼は抱き合っていた。


 お互い初めてにしては上出来だったと思う。


 二日目の夜も同じような感じで進んだ。


 二回目にしては中々攻めていたと思う。



 振り返ってみればこの頃が一番楽しかったのかもしれない。これから彼との関係が急速に冷めていくなんて、この時の私には考えもつかなかった。






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