神幼女ゴッドの現代冒険! ワシは世界の神だからアイス食べまくりなのじゃ!
のほほ! ワシは神幼女ゴッド。
様々な世界の神じゃ。
ワシは伝説のデザート・アイスが好きなので、世界を見て回るフリをしつつアイスを巡る旅をしておる。今はそのアイスが誕生した世界の日本ワールドへ向けて次元の狭間を飛んでおるのだ。暗き宇宙のような次元の狭間を抜けると、ワシの長い白髪と白いワンピースがサアァ……と爽やかな風であおられた!
「のほほ! ここが日本ワールドか……内部は知らんが外観的には中々キレイな世界じゃな。この世界にはアイスという神のみに許されしデザートがあると聞く。ここでそれをたらふく食べてやるぞぇ……」
たらぁ……とヨダレを垂らしているのに気付かないワシはウキャー! という感じで青空を舞いつつ地面に落下する。そうじゃ! ワシは空は飛べぬのじやった! ののほーーーん……。どうやらこの日本ワールドは日が沈む時刻のようで夕陽がワシを照らしておるのぅ――。
「ほげぇ!」
ズゴーン! と地面に落下したワシは無事生還した。
ワシは石頭じゃからそう簡単に死ぬ事は無いのじゃ。
砂場に頭が突き刺さるワシは体制を立て直した。
「ウキャー! 砂がワシの穴という穴に侵入してきてるぞぇ!? まいった困った、まいった困った。困った時は、アイスを食べるのじゃ! のほほ!」
と言いつつ長い髪にまとわりつく砂と白いワンピースを汚す砂を払う。口の中もシャリシャリししてるからペペッとツバを吐き、水場を探したぞぇ。すると、どうやらここは子供の遊び場の公園のようじゃ。神幼女の身体は幼女じゃが、精神的大人であるワシには関係の無い場所じゃな……と、鼻をホジホジしながら周囲を見つめる。
「……ここは公園か。水場はどこにあるのかのぅ……ぬ?」
ブランコで遊ぶ子供達がこちらを見ておるのぅ。
まぁ、この神幼女ゴッドの美しさに見とれておるのじゃろ。
のほほ! ……ぬ?
「あのポニーテールの女の子供。アイスを持っておるじゃないか……神への献上品としてワシに捧げさせよう。何せワシは神じゃから!」
こっちを睨むように見てる青い髪のポニーテールの女の子供に近寄る。
すると、その青いポニーテールの女の子供は周囲の男の子にケリを入れ、やられた者達は公園から消えた。一人になり、アズキらしいバーのアイスを手に持つ女の子供の前に立ち、少し顔を上げて見上げたぞぇ。
「のほほ! ワシは神幼女ゴッド! あらゆる世界の神じゃ。なので献上品としてそのアズキバーをよこすのじゃ」
フッ……とその子供は鼻で笑いよる。
何かおかしい事を言ったかのぅ?
ガリガリガリ! と猛獣のようにアズキバーを食べたその女の子供は殺意を全開にして叫びよる!
「新入りがちょーしに乗るなよ!」
「ほげぇ!?」
アイスを奪おうとするが、ワシはケリをくらいやられてしまった!
ゴロゴロっと、地面を転がり砂場に倒れてしまう。
(つ、強いぞえ……この世界の子供はこんなに強いのか? 神であるワシに土をつけるとは……とんだバチ当たりじゃ! それにアズキバーが……)
悔しさで半べそをかき立ち上がるワシは砂場の砂を払いつつ言う。
「もうワシは怒ったぞ! 神であるワシを愚弄した罪は万死に値する! ……名を名乗れ子供!」
「私は相楽小豆。アズキでいーよ。新入り」
「し、新入りとは何ぞや? ワシはこの世界の新入りかも知れぬが神ぞえ?」
「バーカ。この公園は私が支配してんの。だから新入りがここで遊ぶには献上品が必要。だから献上品が無い奴はこうなるの……」
ブッ! とアズキは音速で口から弾丸を発射した!
コヤツ、まさか異世界の人間!?
「ほげぇ!? 直撃じゃ!」
音速の弾丸を額にくらうワシは悶絶した……。
アズキのアズキ砲は音速で回避不可能じゃ!
百万のダメージを受けるぞぇ?
しかし、コヤツは魔法とは違う凄まじい技を使うのぅ。
神のワシが回避出来ぬとは恐ろしい子供じゃて。
そして、地面に転がる弾丸を見た。
「これは小豆? 豆の小豆ではないか!」
「当たり前だろ。アズキバー食べて小豆以外が口から出たらマジシャンじゃん」
「見た目の割に落ち着いておるのぅ。お主は小学生か?」
「小学三年だバーカ。枝豆小学生のボス・アズキ様をなめんなよ」
コヤツ……本当にボスかもしれん!
ならばワシは魔法を使ってもいいじゃろう。
人間の子供相手に魔法を使うわけにはいかぬが、今は非常事態じゃ。
神を殺す事の出来る神殺しの能力を持つ人間かも知れぬ。
「なので、ワシは魔法を使う! 手加減するから死ぬなよアズキ!」
「魔法? プリプリの見過ぎじゃない? 私も見てるけど……」
フッとまた鼻で笑うアズキに、ワシは火炎魔法ファイアーボールをかます!
「ファイアーボール! ファイアーボール! ファイアーボール!」
のほほ! 三連続で叩き込んでやったわい!
これでアズキもワシに従うはずじゃ……って、ちとやり過ぎたかのぅ?
少し砂が燃えて砂場に黒い穴が開いておる。
死んで……ないよのぅ?
と、冷や汗が流れてると、お尻の穴に激痛が走った!
「ほげぇ!?」
「秘儀・三千世界!」
全てのファイアーボールは外れておった!
何故なら砂場の地面に作られていたトンネルに隠れたのじゃ。
そのトンネルを伝いワシの背後に出たアズキからスーパーカンチョーの三千世界! をくらってしまう。
「ほ、ほげぇ……」
身動きと取れぬワシはゴミを蹴り入れるように蹴られ、砂場の落とし穴に落とされる
ワシを見下ろす砂場の悪魔――。
枝豆小学生のボス・アズキはワシほどではないが美少女の顔立ちで言いおる。
「まさか本当に魔法を使えるとはね。プリプリの見過ぎの幼女かと思ったら本当に異世界から来た神かも知れない。けど、神でも私の手下にするよ。私は何せボスだからね」
「……ボ、ボス殿! このワシをなんとか助けてはくれぬか? 部下ならばワシの力が必要じゃろう? アズキバーをくれたらスゴく働くぞぇ?」
「アズキバー? じゃやるよ。ちゃんと新入りらしく次は献上品をよこせよ、ちり紙幼女ゴッド」
「ちり紙じゃなくて紙……いや、神幼女ゴッドじゃ! ……ぬ?」
すると、アイスの棒が投げられて顔に当たる。
ベタベタしてて汚いのぅ。
て、これはただの棒ではないか!
「コラ、アズキ! これはアズキバーじゃなくてただの棒じゃないか! 嘘はよくないぞぇ! 嘘は!」
「バーカ。嘘じゃないし。その棒をよく見てみなさいな」
「ぬ……?」
よく見るとそのアズキバーの棒にはアタリ!
と書かれておる。つまりは……。
「まさかこれはもう一本貰えるという事かえ?」
「そうよ。その一本はサービスするから次は献上品よこしなさいよ。そうすればこの公園で遊んでもいいわ。じゃーね」
と、アズキは青く長いポニーテールを揺らして夕陽の沈む方角へ消えた。
そして、一人アズキバーのアタリ棒を持って立ちすくむワシはたそがれていた……わけではない!
「……復讐じゃ……このアイス民族・神幼女ゴッドの恐ろしさを見せてやるのじゃーーー!」
と、沈む夕陽に向かい叫んだ!
……でも、ここから出られないぞえ?
(誰か助けてくれ……。ぬ? 近くでワンワンと吠えておる。この鳴き声は……)
野良犬だ。
その野良犬は運よくワシの落ちてる落とし穴の上から顔を覗かせる。
「よし、いいところに来たな。後でアイス食わせてやるから手か尻尾を伸ばしちくり!」
「ワン!」
言葉が通じたのか返事をしたな。
神の声なら動物にも聞こえるのじゃな。
のほほ! ……って!
「コラ! 土をかけるな! 尻尾じゃ尻尾!」
「ワン!」
どうやら今度こそ犬は理解したようじゃ。
これも神としての威厳じゃな。
のほほ……ぬ!
「コラ! その片足を上げたポーズは……! ウキャー!」
そして、犬の放水を浴びたワシはビショビショになりながら、大声で叫び巡邏中の近くの交番の巡査に助けられたのじゃった。この世界の警察というのは役に立つのぅ。まぁ、ワシは神じゃから助けられて当然じゃ!枝豆町の派出所でイスに座るワシは大きく息を吐く。
「生きてて良かった……そして勝つのじゃ!」
そしてワシは、砂場での死闘を思い出しリベンジを誓った!
けどアズキの怖さを思い出して、漏らしてしもうた……。
こうなれば巡査のピストルを借りて行くしかあるまいて。
「覚悟せよアズキ! お前のような悪は神幼女ゴッドが成敗してくれるわ!」
「静かにしろ子供。もう大丈夫なようだな」
枝豆派出所の巡査は向かい側のイスに座り、アクビをしておる。
この巡査にもワシから褒美をやらねばな。
「お前にはこのアズキバーのアタリ棒をやろう。砂場の悪魔アズキからの献上品じゃが、ワシは心が広いから主にやるぞぇ」
「おう、センキュー」
「ほげぇ!?」
ポイッてアズキバーのアタリ棒を捨ておった!
なんじゃこの巡査は!
それが人間のする行いか!
……それにタバコを吹かしておるぞ?
その巡査はまたアクビをして言いよる。
「で、どこから来たんだお前は?」
「だから言っておろう。ワシは神だから異世界から来たのじゃ!」
「ドタマ打ち抜くぞコラ」
バキューン!
本当にピストルを撃ちおった!
「ちゃんと答えろよ幼女。ここは現代で異世界じゃねーんだ。あんまアニメの見過ぎで脳ミソがヨーグルトになってんじゃねーだろうな? そうなら一発ブチこんどくか」
「や、やめてケロ!」
とりあえず魔法を使える事を証明した。
流石の巡査も驚いたじょうじゃな。
のほほ!
「神かは信用しねぇが、お前は確かに異世界の人間のようだな。よし、とりあえずお前はこの派出所の屋上で寝ていいぞ。そして俺の役に立て」
「のほほ! 感謝するぞ巡査! けど、地下に留置所があるなら犯罪者がいないならそこがええぞぇ? 屋上は雨、風がしんどい時があるやもしれんからのぅ」
「地下の留置所は国民の血税で賄うクソ犯罪者を留置する為の場所だ。異世界の税金を払ってないお前が入る場所じゃねーよ。脳ミソ撃ち抜くぞ?」
「ほげぇ! やめてケロ!」
なんじゃこの巡査は……まるでヤクザじゃないか!
これこそ不良警察じゃ、逮捕せねば……ってコヤツは警察か。
ならば誰に逮捕してもらえば……。
とりあえずワシは派出所の屋上でテント生活をする事になったのだ。カラスや野良猫が来たら怖いが、巡査の気持ちを無下にするわけにはいかん。ワシは神じゃから無敵故に天候も動物も怖くないのじゃ! ……何か頭が痛いのぅ?
「ほげぇ!? カ、カラスじゃ! ケロケロ! ケロケロ! やーめてつつくな! ケロケロ! ケロケロ! やーめてつつくな!」
ワシの言葉が通じないカラスに仕方なくアイスを一つやると、どこかへ飛び去った……。
フン、アイス一つで満足するとはのぅ。
所詮は単細胞動物じゃて!
ワシがカラスならアイス二個は貰わねば帰らないけどのぅ……のほほ!
※
翌日になり、ワシは敵情視察として枝豆小学校へと向かった。
そして、校門の前で白く大きな城のような枝豆小学校の校舎を見上げたんじゃ。
「のほほ……この世界はかなり大きな建物で学生は勉強するようじゃな。それに、大きなグラウンドもあり運動までするようじゃ。……ぬ? 体育の時間らしく外に生徒達が集まって来おったな。とりあえず隠れるかの」
と、校門近くの木の上に登り隠れた。
すると目的の人物のアズキが体操着姿で出て来よったぞ!
クラスメイトと談笑しながら気だるそうに歩いて来てガムを噛んでおる。
……コヤツは不良じゃな。
そして教師が現れ授業が開始されたぞ。
「……さて授業の開始か。ボールを使うのかぇ?」
サッカーというボールをゴールに蹴り込む授業のようじゃ。
男子と女子に分かれてやっておるが、アズキだけは男子に混じりやっておる……余程の自信家じゃな。
そう、自信満々のファンタジスタとしてグラウンドのエースとして君臨しておる!
肘打ち、足削りなどの悪どいプレーを審判に見られないようにやりながら味方がパスをしなければボールを奪い、自分で何点もゴールを決めておるな。凄まじい女じゃなアズキは!
アズキの粗暴さを知るワシは思う。
(か、勝てるのか? あの強敵に? ワシは……ぬ?)
キンコンカンコーン! という音が繰り返し鳴り、ワシの腹もグゥー! と鳴った。
アズキのクラスメイトは一目散に教室に戻って行く。
もちろんその一番前にはアズキがいるのぅ。
「どうやら次の授業までの時間が一時間以上空くのぅ……まさか給食? ご飯の時間か! ワシも隠れて食べようぞ……のほほ!」
ワシは給食を作る調理室に忍び込み、残りはあるかを自分見た。
けどももう片付けられた後でカラッポじゃ。
外の野良猫のエサになる給食の残りを野良猫と格闘し、何とか少しだけ食べる事が出来たぞ……野良猫め! ワシは神だと言うのに、何故エサをわけてくれぬのじゃ! それに引っかかれて痛い!
「……中々ここの食事は美味じゃったのぅ。でもワシはデザートのアイスを食べなければならない。放課後の敵情視察も頑張るじょ!」
そんなこんなで放課後になったのじゃ!
のほほ……とワシはアズキにバレぬように鬼の仮面をつけて学校からの帰り道のアズキをつけた。
アズキはカツアゲをしたのかお菓子を食べながら悠々と歩いておるのぅ。
(……にしても枝豆小学校のボスだけに帰り道は大勢と思いきや、一人で歩いておるのぅ。アレだけの事をしていれば誰かがアズキに報復してもおかしくないのに……)
ぬ? あれは……。
アズキの前の道で枝豆小学校の悪いヤツ五人に絡まれているアズキのクラスメイトがおった。
この流れだとアズキにも被害が及ぶじゃろう。
さて、どう出るかな枝豆小学校のボスよ。
「うらああああっ!」
と、叫びアズキは特攻した!
そしてイジメッ子を退治しおった!
退治された五人は逃げながら叫ぶ。
『覚えてろ! 孤独な一匹狼!』
「バーカ。一々覚えてられるかカス野郎。おら、立てよ……」
やられてた少年を介抱したアズキは、背中を見せたまま手を振りどこかへ消えた。
(アズキは自分からはイジメるがイジメている奴は許さなかった。そして多勢の敵に一人で立ち向かっておる……何とも妙なヤツじゃて……)
そしてワシは枝豆公園に向かう。
いつもの公園でアズキはさっきの戦いの怪我の手当てをしておるな。
「傷の手当ても手馴れておるな……。まさに一匹狼じゃて」
孤独な一匹狼。
それがアズキを現すアダ名じゃった。
よし! と思うワシはアズキを仲間にする事にした!
この枝豆町で生きるにはアズキの力が必要じゃ。
ワシは一人で何でも出来るが、部下の一人もいてもいいじゃろう。
「相手にとって不足無しじゃ! 拳で分かりあおうぞアズキ!」
枝豆派出所の巡査に頼んでアズキに果たし状を渡したワシは、翌日の決戦に備えて派出所の屋上のテントで寝た。カラスや猫に襲われたが、今のワシは精神が高ぶってるから気にもならない……んなわきゃ無いぞぇ! メチャメチャしんどい戦いじゃ!
何とか激しい夜を乗り越え、その日の夕方まで傷の手当てに専念した。
そして暁の夕陽が落ち出す光に照らし出される枝豆公園に青いポニーテールのアズキが現れたぞぇ。
「リベンジマッチじゃアズキ。負けたらこの神幼女ゴッドの仲間になるのじゃ! のほほ!」
「バーカ。今度はブチ殺すわよ」
そして、地獄のアズキ公園でのリベンジマッチが始まるぞぇ……。
※
「のほほ! 決着をつけるぞぇ枝豆公園の魔王アズキ!」
「誰が魔王だバーカ。この枝豆公園の支配者の私に勝てるヤツなんていなのよ。二度とそんな口がきけないように修正してあげるわ新入り!」
「のほほ! そっちが動く前に攻撃すれば問題無い!」
ワシは先制して魔法攻撃でアズキを追い詰める!
攻撃は最大の防御じゃて!
「くっ、マジで凄いじゃない!こっちも本気で行くわよ!」
牽制のアズキ砲を口から吐き出し、ワシはその小豆を身体に受けて百万近いダメージを受けつつも耐えた! えらいじゃろ! のほほ!
「ぬ? アズキのヤツ、逃げ出したぞ? 追うしかあるまい! 待てーーー!」
サッとブランコに乗ったアズキは勢いをつけて漕ぎ出しているのぅ。
何をするつもりか知らんが、今のワシは無敵じゃて!
「ブランコアタック!」
ブランコの勢いに乗った一撃を回避した。
そしてワシはブランコから飛び降りるアズキを見据えつつ魔法攻撃の体勢に出る。
「迂闊じゃなアズキ。そんな見え見えの攻撃にこのゴッドがやられると思うたか!」
「よく回避したわね……これはピンチだわ」
「そう、子供らしくここは神であるワシに負けを宣言するがいいぞぇ。そうすればアズキは……ほげぇ!?」
魔法を使う寸前にアズキはしゃがみ、二度目の戻りブランコがワシの顔面に直撃した!
痛いぞぇ!
「バーカ。ブランコの勢いは簡単には止まらないのよ。この公園で私に勝てる者はいないわ」
「ぬおー! 許さんぞアズキ! 待てー!」
今度は鉄棒エリアに逃げおった。
でも鉄棒エリアはただ鉄棒があるだけじゃ……魔法も使えない人間では何か工作が出来る場所ではないぞぇ? のほほ!
「主の攻撃などくらわん! 先に攻撃してみよ!」
「妙な自信があるわねーーなら、くらいな! 逆上がりアタック!」
「その手には乗らん!」
逆上がりする勢いでケリをくらわせようとするが、ワシは華麗に回避した。
しかし華麗過ぎて地面に転がってしもうた。
その間、アズキの奴はポニーテールをフリフリしながら水場の方に逃げおった。
逃すわけにはいかぬぞえ!
「水場で溺れ死ぬのも一興ぞ!」
「黙りなさいな。ウォーターアタック!」
水の出口を親指で抑えて浴びせてきおった!
(くそっ……目が見えぬ。どこに行ったアズキ……)
ぬ?今度は公園のトイレに隠れおった!
すぐさまワシはトイレに進入する。
公園のトイレは程よく汚いのぅ……。
思いつつ、アズキの奇襲に備え女子の個室を一つ一つ調べる。
すると、少し開いた一つの扉の中から人影が外に出てきていた。
「ぬ? ここかアズキ!」
勢いよく中に入るワシはそのアズキにパンチ攻撃をした!
……あれ?
それはただの工事現場の旗振り人形じゃった。
という事は……。
「どこにいるアズキ! あれ? 扉が閉まる?」
すると外からアズキの声が聞こえた。
「外から鍵を閉められるように細工しといたんだよバーカ。ここは私の城だから」
「なぬー!?」
「負けを認めたら開けてあげるわよ。どうする神幼女ゴッド?」
「こうなればワシは怒り爆発じゃ! このトイレごと吹っ飛ばしてやるわい!」
「え……マジ!?」
その時、何故かアズキはメッチャ嬉しそうな顔をしてたようじゃ。
そんなこんなで爆発魔法ドカーンボーン! を使ったぞぇ。
ズゴーン! という爆音と共に枝豆公園のトイレは爆破解体してしもうたのぅ……ほほ。
残骸となるトイレからワシは脱出する。
すると外で顔を灰で黒くするアズキは地面に座りながら言う。
「アハハッ! あんた最高だよゴッド。ここまでやるなんて思ってなかったわ……あー楽しかった」
「ぬ?」
ワシの無謀な魔法にアズキは大笑いしてるぞぇ? それにもう戦意を失っておる……ワシの勝ちなのか? スッキリした顔のアズキは、倒壊したトイレを見つめながら言う。
「……まさか、神がこんな子供相手にここまで本気になるとはね。久しぶりに何かに夢中になれてスッキリしたよ」
晴れ晴れとした顔でアズキは言うのでワシは唖然としてた。
唖然とするワシはこのアズキの心の内が知れて微笑んだ。
すると、アズキはワシに何かをくれるようじゃ。
「楽しかったぜゴッド。やるよアズキバー」
「ぬ? ありがとう……」
枝豆公園のベンチで沈む夕陽を見ながら二人でアズキバーを食べる。
これは美味いのぅ……濃厚なバニラアイスのミルク成分に小豆のツブツブが刺激物のようにワシの口内を刺激して最高じゃ! そんなこんなでワシはアズキの話を聞く。
「……私は私の退屈を埋めてくれるヤツが欲しかった。世の中のルールに縛られないような、不可思議なヤツが仲間に欲しかった。そこにお前が現れたんだゴッド」
「ワシも礼を言おう。お主はアイス探しの旅において最高の相棒かも知れぬ。お主の強欲さは面白味があるぞぇ」
「バーカ。私が面白いのは当然じゃ! ってあんたの口癖うつったわ」
「のほほ! ワシは魅力的じゃからのぅ」
アズキバーを食べ終わるワシ達はこの棒に当たりが書かれてるかどうかを確認する。
どうやら、アズキはハズレのようじゃな。
「残念じゃのぅアズキ。ワシは当たりじゃ!」
「じゃあそれは私のもんだ」
「な! なぬ!?」
「私のもんは私のもん。お前のもんは私のものだ。それがアズキ組のルールだぜ。もらいっ」
「返せー!」
「バーカ。やだよ」
「待てー!」
「お前足が遅いなゴッド」
「うるさーい!」
そんなこんなで、ワシは新たなるアイスと出会う為にこのアズキと共にこの枝豆町で生活しようと思ったのじゃ! のほほ!
「のほほ! じゃねーよ……」
「ぬ?」
背後にはピストルをワシの頭に突きつけた巡査がおった!
これは枝豆派出所の巡査ではないか。
何やら殺気立っておるのぅ。
「この公園をトイレを爆破したら、誰が立て直すんだ? これは国民の血税から作られている建物だ……税金を払わない神ごときが壊していい建物じゃねーんだよ」
「……まぁ、これはあれじゃ。大事の前の小事じゃて。だから逃げ――」
「られねぇよ!」
「ほげぇ!」
マズイぞぇ!
これはマズイ!
この巡査は不良警察じゃから危険じゃ!
「あれ? いつの間にかアズキがいない? 待て巡査! これはアズキとの戦いで!」
「アズキ? ここにいたのはお前だけだろうがゴッド。お前はこの建物を朝までに直さないとピストルで始末する」
チャキ! とピストルを構えられた!
なのでワシは逃げる!
すると巡査は発砲してきおった!
「警察が簡単にピストルを撃つなアホ巡査!」
「黙れ神! こんな事が知られたら俺のダラダラ派出所勤務がバレて困るんだよ! それにお前の力で俺は警視総監になる! 役に立てよゴッド!」
「人間などに使われてたまるか! ワシは神じゃぞ!」
「神ならトイレを直してみろ! 逮捕するぞゴッドよ!」
「アイスくれたら考えようぞ!」
すると、どこからかアズキバーが飛んで来た。
それをキャッチし、青い髪のポニーテールの女に微笑む。
美味そうなアズキバーをひとかじりするワシはジャンプして言う。
「のほほ! 神幼女ゴッドに出来ぬ事などは無いのじゃ!」