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来客
一時が経ち、ドアのベルが鳴りました。
この家は空家なので、ベルに出る人は誰もいません。
「こんにちは。」
元気な女の子の声が、ドアの向こう側から聞こえます。
「こーんーにーちーは。」
ドアがカチャリと開いて、女の子の顔が覗きます。
ニコニコと可愛らしい笑顔の女の子です。
「おばあさん、こんにちは。」
女の子は誰もいない玄関に入って、おばあさんを呼びますが、返事はありません。
ジリリリリリー。
また電話です。するとコツ、コツと杖をつく音が聞こえてきます。
暗い廊下の先に、おばあさんの姿が現れました。
「あっ。やっぱりおばあさん、いたんだ。」
女の子がニコニコ話しかけても、おばあさんは返事をせず、静かに受話器をとります。
「はいはい、私が冬子ですよ。何?春にして欲しい?なら私に言わず、春子にでも 頼みな。」
おばあさんは受話器を置くと、杖をつきながら女の子の前に立ちました。




