おばあさんのこと
ジリリリリリリー。
誰もいない家の中、電話の音だけが響き渡ります。
ジリリリリリリー。
昼間なのに暗い家の中、誰もいないはずなのに、コツ、コツと杖をつく音がします。
ジリリリリリリー、ガチャ。
受話器をとったおばあさんは、しわれた声でこう言いました。
「はいはい、私が冬子ですよ。何?少し暖かくして欲しい?」
おばあさんは眉間にしわを寄せます。
「それはダメだね。私は冬子だから、冷たくすることしか出来ないよ。」
ガチャリ。受話器を置くと、またコツ、コツと杖をつきながら部屋の奥へと消えて行きました。
学校の近くにある、大きな大きな古い家、そこはずっと前から空家のはずでした。
でも、そこに電話をすると、必ずおばあさんが電話に出ます。
そのおばあさんは、願い事を叶えてくれる、不思議な力があるという噂です。
しかし、おばあさんに願い事を叶えてもらうためには、2つの条件があります。
1つ目は、必ず電話でお願いをすることです。
おばあさんは、人間嫌いなので、会いに行ってはいけません。
そして2つ目は、おばあさんを笑わせることです。
おばあさんは笑ったことがありません。
おばあさんを笑わせると、そのご褒美で願い事を叶えてくれるのです。




