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Calender_Girl  作者: 深町珠
73/82

for tokyo




前にも、こんなことがあったな...。

僕はこういう職種だから、あちこちの仕事場を渡り歩く事になる。

ときどき、似たようなこともあった。


でも、だいたいこんな感じで、自然に終わっていくから

まあ、こんなものかな。



そう思い、僕は仕事を続けた。



18時半。

僕は、普段行かない場所、独りになれる実験室で

仕事をしていた。

自分の席に戻ると、論文集の回覧、が来ていた。

回覧したらチェックするシートが貼付されていて

日付と名前を書くようになっている。

僕のすぐ前の順番に、彼女の名前が書いてあり、繊細そうな数字で

2/29

と、書かれていた。



.....ああ、ここに来たんだな。



そう思うと、なんとなく、切なくなった。



......忘れなくっちゃな。



...ふつう、男だったら酒飲んで忘れるのかな?。



.....酒?



そういえば、彼女は酒豪。

和くんたちは、芋焼酎のフラスコ・ボトルを贈ったっけ。



.....まさか、な。



和くんたちは、僕と彼女をまとめようとしてたようにも

思えない事もなかった。

だから、フラスコ・ボトル1本で忘却してください、って

そう言うメッセージだったのかな......?



それで泣いた、なら、なんだか三題噺みたいだな。



僕は、自分の創造性に可笑しくなった。




実験室のプログラムがそろそろ終わる頃だな、と

僕は、第二実験室に行こう、と思った。



第二実験室に向かう。金曜日の19時近く。

でも、まだ研究室の夜は始まったばかりだ。


皆、賑やかに議論を続けている。



第二実験室に向かう廊下に出る。


目的のドアから、パール・ホワイトのダウンパーカーを羽織った

彼女が出てきて、僕はどっきりとした。



もう帰ったとばかり思っていたからだ。


立ち止まってしまった僕を見て、彼女は

笑顔と、緊張、それと淋しさが混じったような

複雑な表情をした。


昼間の神々しい笑顔とは、ちょっと違っていた。



僕が、話しかけようとすると



彼女は僕のそばに寄って「いままでありがとうございました。」と

丁寧にお辞儀をした。



僕は、内心迷いながら「あ、短い間だけど、お世話になりました。

...これからどうするの?」



彼女は、僕を見上げて「ソフトの仕事で東京に引っ越します。」


そういい、それから視線を逸らして


「......少しの間、こっちにいますけど。」と、そう告げた。



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