夏休み
そういう理由もあって、僕は、恋愛にも消極的だった。
自分からアプローチした事など殆どなく、ただ、なんとなく
そういう雰囲気になったり、アプローチされて、
なんとなく一緒に居た、みたいな関係ばかりだったから
ひょっとすると、愛、と言う感覚を知らないのかもしれないと
内心思っていた。
だから、今、この頃のことを振り返っても
それが、どうカテゴライズしていい気持ちなのかはわからない....。
7月を迎え、僕等のオフィースにも夏休みのシーズンがやってくる。
いつものように、廊下を歩いているその子を見かけ、すこし、お話。
.....暑くなってきたねぇ。膝の具合どう?
「あ、もうだいぶいいみたいです」
相変わらず痩せてるなぁ、と僕は思う。
なんか、美味しいものでも食べさせてあげたいな、とも....。
....そう。温泉行った?
「....いえ、やっぱりクルマ、必要ですね、ここだと。」
....そうかもしれないね。ここ、山奥だし。
「でも....。」
.....うん、危ないからね、このあたりは。アッシー君でも頼めば?
と、僕はおどけてそう言った。
彼女は、すこし俯いて視線を逸らし、
「......夏休み、どこか行くんですか?」
と、僕に聞くので、僕は普通に、まったく配慮もせず
....あ、いや、家に居るけど、ホラ、クルマの修理とか。
ボロ家の修繕とかさ、ハハハ。 ....田舎、帰るの?
「いいえ、こっちに居ます。」
僕の方をまっすぐ見て言うので、僕はどぎまぎとした。
何?どうしたの?と言いたい感じだった。
...そう、それじゃ長いお休み、こっちでどこかへ行くんだ。




