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シーと21世紀の阿呆船  作者: ユッキー


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第二の手紙 その1



 心奥(しんおう)に秘めていたオレの願望がどのようなものであったのか、そこから貴方(あなた)に語ることをオレは望む。

 電電公社のいち社員にすぎなかった母方の亡き祖父は、太平洋戦争後しばらくすると将来を見すえて、仙台市近郊のいくつかの土地を購入した。 ──単なるサラリーマンがどのようにして数カ所の土地を購入できたのかは不明──

 さらに長女に孫 ──長女とはオレの母であり孫とはオレのこと── が生まれると、すぐに祖父はそのなかのとくに利便性がよい土地に、今度は付近の山の一区画を買いとり、樹々を伐採して良質な木材をふんだんに使った堅牢な木造家屋を建てた。 ──懇意にしていた腕利きの大工によって、すべての柱や梁に良質で丸太のような丈夫な木材が用いられ、まさに小さいながらも要塞のような建造物であった── しかもこの木造家屋は、その外観にも著しい特徴があったため、県道を行き交う車や垣根付きの舗道を歩く人々は、さも異様に感じながら紅焔(こうえん)のように(あか)い鋭角な三角屋根を見あげていただろう。


 亡き母は何も教えてくれなかったけれど、どうやらオレは双子として生まれてきたはずなのに、ひとりっ子として育てられた。

 オレがまだ小学生だった夏休みの、東の空が不思議な色に染まった朝だった。祖父の家の庭にある井戸の手押しポンプで ──奇妙な音に驚きつつ── 水を()み、いくぶん冷んやりする水で顔を洗っていると、母の妹のまだ結婚前だったヨーコチャンが、背後で右手を眩しそうに(かざ)(ささや)いた。身体を(かが)ませ洗面器の水で顔をビシャビシャさせていたオレの耳には、けっして聞こえないだろうと鷹を(くく)っていたのかもしれないが……


 ──ほんとうは、オジイサンは初孫の名前をヒロミとしたかったんだけどね、でも双子だったから……


 微風のようなかすかな囁きは、オレにとってなによりも大切な新しい真実だった。オレは強い衝撃を受けながらも、聴こえていない素ぶりのまま水をビシャビシャさせ、いつもよりも念入りに顔を洗いつづけた。



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