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シーと21世紀の阿呆船  作者: ユッキー


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第一の手紙



 オレは貴方(あなた)の名前も知らない。しかし貴方(あなた)があの方の妹であることは、報道を通じて知ることができた。この手紙が貴方(あなた)に届くかどうかわからないし、封をあけてくれるかどうかも定かでない。けれどもオレは、数十億光年を旅して赤く(またた)く一等星を見つめ、貴方(あなた)にこの手紙を書きはじめたのだ。 ──貴方(あなた)が母親とともに父親の兄である伯父のもとで暮らしはじめたとの情報を得ることができた──

 秋になれば一本の金木犀きんもくせいが香ばしい匂いを発し、春になれば赤いアネモネが庭いちめんを飾る木造家屋。十字架は掲げられていないものの、まるで教会堂を思わせる鋭角な三角屋根は紅焔(こうえん)のように(あか)蒼穹(そうきゅう)を貫く。両側に垣根付きの舗道のある県道から、南方へ延びる専用通路 ──約30メートルほどの── のいちばん奥の堅牢なこの木造家屋に、オレと愛犬シーズーのシーが移り住んだのは、あの方つまり貴方(あなた)の兄が起こした ──日本中を揺るがした── あの事件が契機となってのことだった。そう向日葵たちがやや上を向き、真夏の太陽に毅然(きぜん)と対峙している季節だった。


 貴方(あなた)の兄が起こした元首相銃撃事件の衝撃は、すぐに現実的なことというよりもどこか夢幻的なものとしてオレの脳裏に刻まれた。オレは職場の大型テレビの前で茫然自失(ぼうぜんじしつ)となって立ち尽くし、窓から差しこむ陽光がとても眩しく感じられた。いつかはオレこそが成し遂げたいと、子どもの頃から密かにこころの奥底で育んでいた願望が、現実のものとなったことを悟りはじめながら、貴方(あなた)の兄が数人のSPに取り押さえられた際の無表情な顔が忘れられない。あの方は焼けつくアスファルトの地面に顔を押さえつけながらも、こころの底で笑っているようにも見えた……



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