お昼ご飯のひと時
「じゃあ、机くっつけちゃおっか」
伊藤さんの号令で、ガタガタと机を移動させる。
おおー、即席のランチグループの完成だ
「うっわ、すげー! 本井さん弁当手作り?」
うーん、堀内くんみたいにどうやったら話せるんだろう
「うん、まあね、昨日の残り物だけど」
本井さんの弁当、彩り豊かだなあ
俺の手元にあるコンビニのビニールに入ったままの焼きそばパンとは大違いだ
「へえ、美味そうじゃん。女子力高ーい」
「ふふ、かおりも食べる?」
「いや、あたしは購買のパンでいいや。悪いし」
おかずの中には卵焼き、ブロッコリー、そして……
「……タコさん」
あっ、やべ声に出ちゃった
弁当の隅に、赤いタコさんウインナーがいる
高校生になってもこれを入れるセンス、なんか可愛いな
「あ、これ? 好き?」
「えっ、あ、いや嫌いじゃないけど」
「ふーん……食べる? 作りすぎちゃって」
「え、いいの?」
えまじ食えるの??
「うん、ほら。パン出して」
うおおー、まじかーー!!
茶色い焼きそばの上に鎮座する、鮮やかな赤色
うん、なんともシュールな光景だ
「おおー! いいなー本堂! 弁当のお裾分けかよー!」 ここぞとばかりに堀内くんが騒ぎ出す。
「ちょっ、堀内くん声デカいって! ただのおかず交換だろ」
「いいや! そのタコさんは本井さんの手作りなわけ! つまりそれは愛なわけ!」
「うっせ、黙って食え!」
全く堀内くん大袈裟なんだか……うっわ、うめぇ
なんか、冷めてるのに温けぇ
「どう?」
「うん、すっごい美味しい」
「そう、よかったー」
うお、本井さんの笑顔、破壊力やっば
「カーッ、けしから羨ましいな、2人見てるだけでお腹いっぱいだわ」
「ならどっか行けよなー」
照れ隠ししか出来ないってー
「うわ、ひっどー、友達甲斐がないやつだなー、あはは」
伊藤さんも呆れて笑っちゃってるし
なんだこれ
めっちゃ楽しいじゃん、これが高校生活かー
キーンコーン、カーンコーン
終わった、6時間目、長すぎ
「はい、じゃあ今日はここまで。日直ー」
担任の声とともに、教室がざわつき始める。
いつもなら、俺はこの瞬間に「透明人間」モードに入って速攻で帰る
それが俺の生存戦略だ
でも、今日こそは、、、
よし、いける
前の席、堀内くんがカバンに教科書を突っ込んでいる
「……あ、あのさ、堀内くん」
「ん?」
「今日、駅まで……一緒に帰らない?」
言えた
噛まずに言えたぞ俺
「お? おう、いいけど。珍しいな本堂から誘うなんて」
「あ、いや、まあ……」
「いいぜいいぜ! 途中、ファミチキ食ってこうぜー」
うわ、めっちゃいい奴、後光が差して見えるわ
これが「ツレ」ってやつか
「あ、あたしたちも混ぜてよ」
不意に、横から声がかかる。
見ると、伊藤さんがカバンを肩にかけて立っていた。
その隣には、ニコニコしている瑞希。
「え、伊藤さんも?」
「なに、あたしらがいたら邪魔?」
「いやいや! むしろ大歓迎っすよ! なあ本堂!」
堀内くんが俺の背中をバシッと叩く。
痛いって
「ふふ、じゃあ行こ。真くん」
瑞希が自然な動作で俺の隣に来てるけど.......
え、待って、このフォーメーション
前列に堀内くんと伊藤さん、後列に俺と瑞希
これ……いわゆるダブルデート的な配置では!?
「でさー、昨日のテレビ見た? あの芸人のやつ」
「あー、見た見た! あん時の顔ヤバかったよなー」
「ちょ、思い出し笑いすんなしキモいー」
前を行く二人がギャーギャー騒いでいる
会話が弾む
途切れない
……すげえ
俺、この輪の中にいていいんだ。
「じゃあさ、今度の日曜、この4人でカラオケとか行かね?」
堀内くんが、ファミチキの包みをゴミ箱に投げながら言った。
「え、カラオケ?」
「そ、本堂も歌うだろ?」
「いや俺は下手だし……」
「関係ねーって! 伊藤たちも行くだろ?」
「んー、まあ暇だし? 瑞希が行くなら行くー」
伊藤さんがチラッと本井さんを見て、本井さんは俺を見上げて、小首を傾げてる
「私は真くんが行くなら、行きたいな」
「ヒュー! 『真くんが行くなら』いただきましたー!」
「うっせ、堀内!」
「あーあ、熱いねぇー」
堀内くんがニヤニヤしながら冷やかしてくる
顔が熱い、絶対に赤い
ゲラゲラ笑いながら、駅への道を歩く
夕日が眩しい
風が心地いい
これが青春か
今まで俺、人生損してたわ
ふと、横を見ると瑞希が俺だけに聞こえる声で囁く。
「楽しみだね、日曜日」
「……うん」
本当に、夢みたいだ、こんな日がずっと続けばいいのに




