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スローライフは箱庭で〜二重生活で精霊たちの箱庭を開拓します  作者: 水玉りんご


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第9話 箱庭への来客

「おぉ〜い!」


どこかから声が聞こえ、思わず顔を上げる。


収穫した野菜をエコバッグに詰めながら、首を傾げた。


「今の、タマちゃん?」


「僕じゃないよ」


「何か人っぽい声がしたよね?」


2人で顔を見合わせると、今度は男性の声がはっきりと聞こえた。


「誰か人が呼んでるよ。行ってみよう、小春ちゃん」


「そうだね……また怖い一つ目男だったらどうしよう」


私の心配を察したのか、先を行くタマちゃんがクルリと回って戻ってきた。


「大丈夫だよ。前みたいな悪意は感じない。危険な人じゃない」


「タマちゃんって、そういうの分かるの?」


「うん!」


「よかった。それなら急ごう!」


声の方向に歩いていくと、丘の向こうから大人が3人、ゆっくりと歩いてくるのが見えた。


「大丈夫ですかー?」


「助かった……本当に人が住んでたんだ」


「ここで手当を。少し休憩させてもらおう」


「もう少しじゃ。頑張れ」


小走りにヒゲの男性が前に出る。


「すみません。川の下流の町から来たのですが、足を挫いてしまって……少し休ませてもらえませんか」


後ろの赤毛の青年は杖代わりの枝を握り、額に脂汗をかきながら顔を歪めている。


怪我がひどそうだ。


小屋に招き入れるのは、一応女性の一人暮らしとしてどうしたものか。

思案していると、小柄な白髪の年配男性が手を振った。


「小屋じゃなくていい。庭で少し休ませてもらえんじゃろうか」


「それでしたら、ここに! この丸太を椅子代わりにどうぞ」


案内すると、3人は庭の丸太に腰を下ろした。


小屋に入れずに済んだことに、ほっと胸を撫で下ろす。


「すまない……俺が足を踏み外したばかりに」


「いやいや、しばらく使っていない道だったから仕方ないさ。ベネット、ちょっと見せてみろ」


私も恐る恐る覗いてみる。

痛々しく足首が腫れていた。

これは骨折しているかもしれない。

この世界の病院はどうなっているのだろう、と考えながらも、まずは応急手当だ。


「う〜ん、折れてるかもな。少し休んだら、俺は先に街に戻って救助を呼んでくるつもりだ。」


「そうじゃな。これじゃ歩いて帰るのは無理じゃな」


タマちゃんがそでをツンツンと引っ張ってきた。


「小春ちゃん、お水で冷やしてあげようよ」


「そうだね! みなさん、お水汲んでくるので少々お待ちください」


泉の水で足を冷やせば、少しは痛みが和らぐかもしれない。


布も使うといい。


消毒スプレーをボロ布にワンプッシュ……と思ったところで、今日の転送品を思い出した。


「ナイス、私!」



◇ ◇ ◇



「手当してもらう身で、申し訳ないが、なんだ!? それは」


ヒゲの男性は私が戻って来た時には、もう街へと立っていた。


透明のビニールをペリリっと剥がす様子を見て、赤毛の青年ベネットは不安になったのか、距離を取ろうとする。


「足、動かないでください! 水で冷やすより効果あると思うので」


湿布を腫れた足に貼ると、ベネットが驚く。


「冷たい! なんだこれは、張り付いたぞ!」


「少し痛みが和らぐと思います」


「スースーするね〜ハッカのにおいもする」


タマちゃんは湿布のにおいを嗅いで、楽しそうにクンクンしている。


「痛みが……少し和らいだ。ありがとう」


「いえいえ。ところで、街から来たんですよね?」


「そうじゃ。川に急に水が戻ったので、様子を見に来たんじゃ。しかし、こんな所に人が住んでるとは思わんかった」


「え!? 川って、あの、あそこの?」


先日見た、カラカラの溝の跡の方向を指差す。

川に戻っているなんて、想像できなかった。


「こんなに近くに住んでいるのに、知らなかったのか」


「びっくりだね〜」


タマちゃんが嬉しそうな声で言う。


「うん、びっくりだね。後で見に行ってみようか、タマちゃん」


「川があれば、魚釣りが出来るかもしれないよ〜!」


「わぁ〜私釣りとかやってみたかったんだ!」


はしゃぐその視線の先で、ベネットが不審そうにこちらを見ている。


「あの、どうかしましたか?」


老人が恐る恐る口を挟む。


「あーー、誰と話してるんじゃ?……タマちゃんって誰じゃ?」


「タマちゃんは、ここの……」


え、タマちゃんが見えてるのって、私だけなのーー?


完全に不審者を見る目で見られて、居た堪れなくなり、立ち上がった。


「お茶、入れて来ますねー!」


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