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6話 まさかのおじいちゃんの手紙

「ああー、おじいちゃんの本なのにばらまいちゃった……あれ? なんだろう?」

 本の間からちらりと白い紙が顔をのぞかせている。あ、あっちにもある。

「メモかなんかか?」

 久人が両方とも拾い上げて紙を開く。

「あー………」

 顔が赤くなってない? どうしたの?

 ん。と小さくうめき声をあげながら、久人は私にその紙を押し付けてきた。


 愛しい人へ


 お元気でしょうか。

 貴方と出逢ってから片時も貴方の笑顔が頭から離れません。

 闇夜よりも黒く艶やかな髪美しく、夜空に咲く花よりも華やいだ笑顔に、私は心を奪われたのです。

 あの丘で聞く小鳥よりもきれいで細い笑い声を再び聞きたくなるのはなぜでしょうか。

 繋いだ手が暖かく、貴女に触れたいと思うのはどうしてでしょうか。

 約束の通り、再び会える日を楽しみにしております。

 貴方のような淑女に出会えて、私は幸運です。


 ミキヒサ


 愛する人へ


 いかがお過ごしでしょうか。

 貴方と出逢ったのは私にとって幸運でした。

 なぜなら、貴方の笑顔が片時も頭から離れないほど恋焦がれているからです。

 闇夜よりも黒く艶やかな髪美しく、夜の出店の明かりよりも明るい笑顔に、私は心を奪われたのです。

 貴方の鈴のような笑い声をまた聞きたくなります。静けさが、より寂しさを募らせるのです。

 貴女にまた会いたい。お慕いしております。

 約束の日が待ち遠しいのです。


 ミキヒサ



「ひゃー、熱烈な恋文!! ミキヒサっておじいちゃんの手紙じゃん、これ!」

「テンション上がりすぎだろ。身内の手紙だぞ」

「おじいちゃんとおばあちゃんは私の理想なんですぅ。少女漫画顔負けのラブストーリーとか、胸がきゅんきゅんしちゃう」

「そんなお前はばあちゃんに別の人を会わせようとしてるけどな」

「うっ、それはこれ。これはこれ! っていうか、この恋文、おばあちゃんへの返信じゃないの?」

「いやぁ……これ書いた日付が後ろにあるんだけど、ばあちゃんの封筒の日付より数日後なんだよなぁ。でも、内容かみ合ってなくね?」

「そうだよね、昔の手紙なんだから期間考えるとそんなもんか。内容は……かみ合ってないね。両方とも惚気だけど」

 並べてみるけど、やっぱりどうしても返信の内容には思えない。

「おじいちゃんの手紙は宛名が抽象的だね」

「誰宛てかわからないんだよなぁ。封筒もないし、これ以上情報がない……じいちゃんに話聞きに行く?」

「絶対話してくれないよ~。元々そんなにしゃべる方じゃないし、この手紙見せたら没収されちゃうかも」

「だよなぁ。あの人がこんな手紙書くなんてなぁ……頑固爺って感じなのに」

「おじいちゃんにも青春時代があるんだよ」

「オレは孫にこんな手紙見られたくねぇ……な」

「だから本に挟んで隠しておいたのかな」

「オレは絶対焼却処分しよう」

「ひ~さ~と~、ってことは久人もラブレター書いたことあるんだ~?」

 面白いこと聞いた。久人はふいっと顔をそらしてしまうので、ほっぺたを指でつっつく。

「ほら、吐け吐け~。なんなら乙女心がわかる野乃花様が添削してあげるよ~?」

「お前にはできねぇよ! いろんな意味で」

「恥ずかしがらずにさ~」

「早く本片付けるぞ。夕飯で呼びに来られても困るだろ」

「えぇ~!」

 結局ごまかされてその日はそれ以上久人に話を聞くことはできなかった。

 でも、おばあちゃんの手紙に進展もあったし、おじいちゃんの手紙も見つけちゃったから、今日は大収穫!



面白い、楽しい、と感じて頂けたら、

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