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17話 恋文

 花火大会で訪れたという神社はそう遠くはなかった。神社の裏側にある丘は花火大会の穴場なんだって。

 おじいちゃんの記憶の通りの場所に、おばあちゃんは居た。

 座って夜空を眺めている。

「おばあちゃん!」

「あら、ののちゃん。どうしてここにいるのかしら?」

 私が先に声をかけると、おばあちゃんは驚いたように私を見た。

「おばあちゃんの逢いたい人。連れてきたよ!」

 おじいちゃんをおばあちゃんの前に押した。二人とも固まってしまうのがわかった。

「…………」

「…………」

 二人とも黙りこくってしまう。似たもの夫婦なんだから。

「おばあちゃんはおじいちゃんの手紙読んだからここに来たんでしょ?」

「……ええ、初めは悲しみでいっぱいだったけど、あの手紙を読み返してるうちに花火大会の花火を一緒に見たことを思い出してね、もしかしたら……って」

「そのもしかしたらは、あってる。あの手紙は君に宛てたものなんだ」

 おじいちゃんがおばあちゃんの手を取って、はっきりと告げた。おばあちゃんの目に涙が浮かぶ。

「勇気が出なくて出せなかった手紙なんだよ。あんな手紙、男らしくはないだろう? 軟派なヤツだと思われて君に愛想をつかされると思うと」

「いやですね、私はそんなことで愛想つかさないですよ」

「ああ、今は理解している。君も私にもっと言ってくれてよかった。君の兄への相談の手紙を見て、私もやっと気持ちの整理ができたくらいだ」

「あら! あの手紙!?」

「私たちは、これから始めてもいいだろうか」

 おじいちゃんはそっと封筒をおばあちゃんに手渡した。

 それはおじいちゃんのこの何十年という思いが詰まった手紙だ。


富志江へ


 愛している。

 またいつものように隣で笑っていてほしい。


幹久


 短い。けどたしかなラブレター。

「ええ、ええ……お返事書かせてください」

「そうしたらまた返事を書くよ」

 二人はもう大丈夫だろう。

 私は久人の腕を引っ張って、そっとその場を離れる。

「あ~! 上手くいってよかった~!」

「ほんっと、よかったよ。二人が隠したかった手紙を相手に渡しちゃうなんて、野乃花にしかできないな」

「へへー、愛衣に言わせたらきっと恋のキューピッドだねって言ってくれそう」

「強引なキューピッドだな」

「いいじゃん、手紙がちゃんと気持ちを伝える役目を果たせて、こんなにハッピーエンドなんだから」

「ご都合主義ー! しっかし絡まりすぎてたなぁ」

「うん、気持ちは伝えないと伝わらないんだね」

「そうだな……」

 久人が、私の肩をつつく。

「野乃花……いつか手紙出してやるよ」

「久人が書いてるっていう手紙? わ、楽しみ~」

「わかってねぇだろ」

「わかってるよ~!」

 久人の手紙はきっとうれしいものだと思う。すっごく楽しみだ。

 私もいつかおじいちゃんとおばあちゃんみたく恋をしてみたい。気持ちを伝えられる恋をね!

ここまで読んでくださりありがとうございます。

内容はいかがでしたでしょうか。

短い話ですが、初ミステリーということでわくわくしながら書きました。

少しでも楽しんでもらえたら光栄です。


よろしければ、感想や、レビュー、下の星マークから評価などをいただけますと、大変嬉しいです。

次回作の活力になります!


また次回作でお会いできますように。

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