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15話 誤解

 久人が堪りかねておじいちゃんに話しかけた。

「心中お察しします……」

「ああ……ごほん。まさかこんな年になってあの手紙を掘り返されるとは……しかし、なぜそれで怒っているんだ?」

「誤解……されたんじゃないかと」

「誤解?」

「あの手紙、宛て主は”愛しい人”とか”愛する人”って抽象的だったじゃないですか。あれって富志江さん宛てに書いたものだったんでしょう?」

「あ、ああ、そうだ。会う度に手紙に思いをしたためたものだ。恥ずかしすぎて出せずに本の間に入れてしまい込んでしまっていたがな」

「それが富志江さんには伝わってないんだと思います」

「おばあちゃん、私にはこんな手紙くれなかったのに。って怒ってったってママが言ってたよ」

「そ、そうか……そうだな。ずっと言葉にすることができなかった。隣にずっと寄り添ってくれていて、それだけで私は満足だったんだよ。それがもう当たり前だと思っていた……そのツケが回ってきたのか」

 はたから見てればおじいちゃんはおばあちゃんを大切に思ってるのはよくわかった。おばあちゃんが出かけようとするとさりげなく手を取って、段差をサポートしたり、荷物を持ったり、近所でも有名なおしどり夫婦だもん。

 でも、表立って惚気たりはしなかった。愛の言葉を聞いたことなかったし、好きだって言葉にしたことがなかったのかもしれない。

「おじいちゃん、おばあちゃんに今の気持ち伝えようよ!」

 私はおじいちゃんの手を取る。

「そうやってしまい込んで、普段も何も言わないから伝わらないんだよ! だから、おばあちゃんにおじいちゃんの気持ちをちゃんと伝えよう!」

「いや、しかしもう若くもない……それに富志江も長年傍にはいてくれたが、見合いでの結婚だったわけだし、離婚届けを突きつけてくるくらいだ、言われても困るだろう」

 いつになく弱気……。似たもの同士だって聞いたけど、そっか、おばあちゃんもおじいちゃんに好きな気持ち伝えてないんだ。手紙では書けるのに、この二人は――!

「そんなことない。絶対ない。おばあちゃんもおじいちゃんと同じくらいおじいちゃんが好きだよ」

 私は、封筒に入ったおばあちゃんの手紙をおじいちゃんに差し出した。

「これは、おばあちゃんがおじいちゃんのお兄さんに出した手紙だよ」

「――! 富志江はまさか……」

 手紙を読んでおじいちゃんが青ざめる。ママから聞いたおばあちゃんと同じ反応をしてる。

「誤解しないでね。これは、おじいちゃんとのことをお兄さんに相談した手紙。ここに書いている慕ってる人は――わかるよね?」

 おじいちゃんは手紙と私を見比べる。目が大きく見開かれてて驚いているのがわかった。

「さ、おじいちゃん! おばあちゃんを探しに行こう!」

「ああ……そうだな」

 おじいちゃんは頷いて私からおばあちゃんの書置きを受け取った。

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