エンディング
(最終ラウンドを終え、スタジオには深い議論の余韻が漂っている。あすかは穏やかな表情で、しかし確かな手応えを感じている様子で、対談者たちに向き直る)
あすか: 「皆様、ありがとうございました。これにて、『歴史バトルロワイヤル』、テーマ『食』、全ラウンド終了でございます!」
(あすか、深く一礼。対談者たちも、それぞれの形で応える。サヴァランは軽く会釈、辻はにこやかに頷き、ボーローグは真剣な表情のまま、魯山人はふんと鼻を鳴らす)
あすか: 「いやはや…まさに時空を超えた『舌戦』でしたね。」(クロノスを操作し、これまでの議論のハイライト映像やキーワードをスクリーンに映し出す)
あすか: 「ラウンド1、『美食とは何か?』。快楽、芸術、哲学…そして、ボーローグ様の提起された『生存』という根源的な問い。ラウンド2、『食の本質とは何か?』。素材、器、技、総合的な体験、そして栄養、安全、安定供給…。ラウンド3、『食は文化か、生存か?』。対立するかに見えた二つの側面が、実は深く結びついていること。そして最終ラウンド、『食の未来と現代への提言』…。科学技術、食育、食を楽しむ心、本物を求める意志…。」
あすか: 「皆様の哲学が火花を散らし、時には共鳴し合いながら、食というテーマがいかに広大で、奥深く、そして現代を生きる私たち自身に深く関わる問題であるかを、改めて浮き彫りにしてくれました。」
あすか: (スクリーンから対談者たちへと視線を戻し)「この対話を通じて見えてきたのは、食とは、単に空腹を満たすための行為でも、一部の専門家だけが語る高尚なものでもない、ということではないでしょうか。それは、私たちの生命の根源であり、日々の喜びであり、文化の礎であり、そして未来を形作る選択そのものである…。」
あすか: 「答えは一つではありませんでした。それでいいのだと思います。多様な価値観があるからこそ、食の世界は豊かで、面白い。大切なのは、それぞれの視点を知り、考え、そして自分自身が『食』とどう向き合っていくか、ということなのかもしれません。」
あすか: (柔らかな笑顔で)「さて、名残惜しいのですが、そろそろお別れの時間が近づいてまいりました。最後に、この時空を超えた対談を終えて、皆様、一言ずつご感想をいただけますでしょうか? まずは、ボーローグ様、お願いいたします。」
ボーローグ: (頷き、実直な口調で)「…有意義な時間だった。普段、私が関わることのない分野の方々の意見を聞けたのは、刺激になった。特に、食文化や精神的な豊かさといった視点は、今後の食料問題を考える上で、無視できない要素だと再認識した。」(しかし、すぐに厳しい表情に戻り)「だが、忘れないでほしい。議論だけでは、腹は膨れない。行動こそが重要だ。世界から飢餓をなくすという私の戦いは、まだ終わってはいない。諸君も、それぞれの立場で、行動を起こしてほしい。」
あすか: 「行動こそが重要…ボーローグ様、力強いお言葉、ありがとうございます。続いて、辻様、いかがでしたか?」
辻: (穏やかな笑顔で)「本当に、夢のような時間でした。尊敬する歴史上の偉大な方々と、こうして食について語り合えたことは、私の生涯の宝物になるでしょう。皆様の深い哲学、鋭い感性、そして揺るぎない信念に触れ、改めて食の世界の奥深さと、自らの研究・教育への使命感を強くいたしました。」(他の対談者を見渡し)「異なる意見の中にも、食への真摯な愛情という共通点を感じられた気がします。この経験を糧に、これからも食文化の発展と継承に尽力してまいりたいと思います。素晴らしい機会をありがとうございました。」
あすか: 「食への真摯な愛情…ありがとうございます、辻様。では、魯山人様、いかがでしたでしょうか?」
魯山人: (腕を組んだまま、わざとらしく溜息をつき)「ふん、長々と付き合わされたわい…。まあ、少しは骨のある奴もいたようだが…」(チラリと他の対談者を見て)「まだまだ青いな、という印象だな。」
魯山人: (しかし、口元にほんのわずかな満足感が漂う)「だが、一つだけ言っておく。わしの言ったこと、よく覚えておくがいい。小手先の理屈や流行に惑わされるな。自分の舌を磨け。本物を知る努力を怠るな。…まあ、それが出来れば、の話だがな!」(ふいと横を向く)
あすか: (苦笑しつつ)「はい、肝に銘じます。魯山人様、ありがとうございました。それでは最後に、サヴァラン様、お願いいたします。」
サヴァラン: (満足げに微笑み、優雅に一礼して)「いやはや、実に愉快で、知的な刺激に満ちた晩餐会でしたな! 異なる時代、異なる文化の方々と、食という普遍的なテーマについて語り合えたことは、望外の喜びです。」(他の対談者を見渡し)「ムッシュ・ボーローグの現実を見据える力強さ、ムッシュ辻の探求心と誠実さ、そしてムッシュ魯山人の妥協なき美学…それぞれに見事な哲学があり、大いに啓発されました。」
サヴァラン: (視聴者に向かって語りかけるように)「食の探求は、人生を豊かにする終わりのない旅です。願わくば、この対話が、皆さんの食卓を、ほんの少しでも味わい深いものにする一助となりますように。そして、いつかまた、時空を超えた食卓でお会いできることを楽しみにしておりますぞ。Au revoir!(さようなら!)」
あすか: 「皆様、心に残るお言葉、誠にありがとうございました!」(感動を隠せない様子で)「名残惜しいですが、皆様を元の時代へとお送りする時間です。クロノス、お願い!」
(再び、スタジオの奥に「スターゲート」が出現し、眩い光を放つ)
あすか: (一人ひとりの目を見て、感謝を込めて)「ノーマン・ボーローグ様! あなたの揺るぎない信念と行動が、数億の命を救いました。食料は人権であるというメッセージ、私たちは決して忘れません! どうか、安らかに…。」
(ボーローグ、力強く頷き、スターゲートへ歩みを進め、光の中に消える)
あすか: 「辻静雄様! 日本の食文化に、本場のエスプリという新たな扉を開いてくださいました。あなたの探求心と教育への情熱は、今も多くの料理人たちに受け継がれています。ありがとうございました!」
(辻、穏やかな笑顔で深く一礼し、スターゲートへ。光に包まれる)
あすか: 「北大路魯山人様! 料理と器、美と食を極限まで追求された孤高の星。その妥協なき美意識と、本物を見抜く眼差しは、時代を超えて私たちに問いかけ続けます。…ありがとうございました!」
(魯山人、最後までふてぶてしい態度を崩さず、しかしどこか名残惜しそうに?スターゲートへ。一瞬振り返り、光の中に消える)
あすか: 「そして、ブリア=サヴァラン様! 食を哲学へと高め、人生を味わうことの素晴らしさを教えてくださいました。『美味礼讃』の言葉は、これからも私たちの食卓を照らし続けてくれるでしょう。Merci beaucoup!(ありがとうございました!)」
(サヴァラン、優雅に帽子を取り一礼。ウィンクを残してスターゲートへ。光が消える)
(スターゲートが閉じ、スタジオに静寂が戻る。あすか、一人中央に立ち、感慨深げに息をつく)
あすか: 「偉人たちの声、彼らの魂の叫び…皆様の心には、どのように響きましたでしょうか。」
あすか: (視聴者に向かって、優しい笑顔で)「『歴史バトルロワイヤル』、テーマ『食』。今宵はここまでとなります。」
あすか: 「食とは、生きることそのもの。願わくば、この番組が、皆さんの日々の食卓を、ほんの少しでも豊かに、味わい深くする、小さなきっかけとなりますように。」
あすか: 「物語の声を聞く案内人、あすかでした。またいつか、時空を超えた対話の場で、お会いいたしましょう。」
(あすか、深く一礼。スタジオの照明がゆっくりと落ちていき、番組ロゴが浮かび上がり、静かに番組が終了する)