オープニング
(オープニングタイトル映像後、スタジオ中央に立つあすかにスポットライトが当たる。手にはタブレット「クロノス」を持っている。)
あすか:「星々の記憶、英雄たちの息吹…時空を超え、物語の声を聞く案内人、わたくし、あすかがお届けする『歴史バトルロワイヤル』へ、ようこそお越しくださいました。」(可憐な笑顔で一礼)
あすか:「今宵、私たちが旅するのは、人類の歴史と共にあり、私たちの日常に深く根差しながらも、無限の広がりを持つ世界…そう、『食』の世界です。」
あすか:「食べることは、生きること。けれど、ただ空腹を満たすだけではありません。ある人はそこに至上の快楽を見出し、ある人は芸術の高みを目指し、またある人は、生きるための糧そのものと向き合い続けました。」
あすか:「この不思議なタブレット『クロノス』が、固く閉ざされた時空の扉を開き、偉人たちの魂の声、その熱い哲学を、今宵このスタジオに響かせます。」(クロノスを優しく掲げ、画面が淡く光る)
あすか:「さあ、準備はよろしいでしょうか?食にその生涯を捧げ、歴史に名を刻んだ偉人たちをお呼びいたしましょう!クロノス、お願い!」
(あすかがクロノスを操作すると、スタジオの奥、壁面の一部が眩い光を放ち、渦を巻くような「スターゲート」が出現する)
あすか:「まずお一方目!美食の探求は、まさに人間性の証!『美味礼讃』を著し、食を哲学へと昇華させた、美食学の祖!フランスより、ブリア=サヴァラン様!」
(スターゲートから、フロックコートに身を包んだサヴァランが、杖を片手に優雅に登場。驚きつつも好奇心に満ちた目でスタジオを見渡し、あすかに軽く一礼する)
サヴァラン:「ほう…これは驚いた。時空を超えるとは、まさに晩餐にふさわしい趣向ですな。して、ここが現代というものかね?」(興味深そうに設えを眺めながら、指定された席へゆっくりと歩む)
あすか:「ようこそお越しくださいました、サヴァラン様。続いてはこの方!器か料理か、否、その両極!美と食の本質を追い求め、妥協を許さぬ舌と眼を持った孤高の芸術家!日本より、北大路魯山人様!」
(スターゲートから、和服姿の魯山人が、やや不機嫌そうな、あるいは尊大な態度で登場。鋭い目で周囲を睥睨し、サヴァランを一瞥してから、ゆっくりと席に向かう)
魯山人:「ふん、なんだ騒々しい。わしをこんな所に呼び出すとは、一体何の用だ?」(ドカッと音を立てるように席に着き、腕を組む)
あすか:(苦笑しつつ)「魯山人様、お待ちしておりました。さあ、次なるお方です!本場のエスプリを日本へ!その情熱と知性でフランス料理の道を切り拓き、食文化の発展に生涯を捧げた研究者にして教育者!辻静雄様!」
(スターゲートから、スーツ姿の辻が穏やかな笑顔で登場。状況にやや戸惑いながらも、丁寧に深々と一礼し、落ち着いた足取りで席へ)
辻:「これは…辻静雄と申します。このような場にお招きいただき、光栄です。しかし、一体…?」(サヴァランと魯山人の姿を認め、驚きと興味の入り混じった表情を見せる)
あすか:「辻様、ようこそ。そして、最後はこの方なくして現代の食は語れません!緑の革命で数億もの飢えた命を救った、不屈の農学者!食料こそ平和の礎と信じたノーベル平和賞受賞者!アメリカより、ノーマン・ボーローグ様!」
(スターゲートから、実直そうな風貌のボーローグが、力強い足取りで登場。華やかなスタジオよりも、何か別のものを見ているような真剣な眼差しで、真っ直ぐに席へ向かう)
ボーローグ:「ボーローグだ。…これは、何の集まりなんだね?私にはまだ、畑でやるべき仕事が山積みなのだが。」(他の三人を順に見渡し、いぶかしげな表情で席に着く)
あすか:(全員が着席したのを確認し、中央に進み出て)「皆様、時空を超えてようこそお集まりくださいました!美食の哲学者、孤高の芸術家、食文化の研究者、そして食料問題の英雄…。まさに、食の歴史を体現する方々です!」
(一瞬の沈黙。サヴァランは面白そうに他のメンバーを観察し、魯山人は腕を組んだまま不機嫌そうに、辻はやや緊張した面持ちで、ボーローグは真剣な表情でいる)
あすか:「今宵は難しい話は抜きにして…いや、むしろ皆様にとっては最も重要な話になるでしょうか。皆様の『食』に対する哲学、存分にぶつけ合っていただきたいと思います。」
あすか:「まずは、皆様の哲学の根幹に触れさせてください。クロノスより最初の問いです。」(クロノスの画面が光り、問いが表示される)
あすか:「あなたにとって、『食』とは、一言で表現するならば、何でしょうか?ボーローグ様、よろしければ、あなたからお聞かせいただけますか?」
ボーローグ:(迷いなく、力強く)「『命』だ。…それ以外にない。腹が減っていては、哲学も芸術も、何も始まらん。」
あすか:「命…ありがとうございます。では、魯山人様、いかがでしょうか?」
魯山人:(ボーローグを一瞥し、鼻で笑うように)「ふん、腹を満たすだけなら獣も同然よ。わしにとって食とは…『美』だ。旨いか、不味いか。そこに美があるか、ないか。それだけのことよ。命だなんだと騒ぐのは、食を知らん者の戯言だ。」
あすか:「美…獣とは手厳しいですね。辻様はいかがでしょう?」
辻:(魯山人の言葉を受けつつ、冷静に)「魯山人先生のおっしゃる『美』も、もちろん食の重要な要素です。ですが、私にとっては『探求』でしょうか。なぜ美味しいのか、どうすればもっと美味しくなるのか。その背景にある歴史、文化、そしてそれを支える技術…知りたいこと、学ぶべきことは無限にありますから。」
あすか:「探求…尽きることのないテーマですね。では最後に、サヴァラン様、お願いします。」
サヴァラン:(皆の意見を聞き、満足そうに頷きながら)「ふむ…命、美、探求。どれも食の一側面ですな。だが、あえて一言で言うならば、私にとっては『幸福』そのものです。食卓の快楽は五感を満たし、知性を刺激する。まさに『どんなものを食べているか言ってみたまえ、君がどんな人間であるかを言い当ててみせよう』…食は我々の存在そのものを映し出す、最も身近で最も深遠な幸福の源泉なのです。」
あすか:(感嘆の息を漏らし)「命、美、探求、そして幸福…!ありがとうございます!すでに皆様の哲学の違いが鮮明になってまいりました!これは白熱した議論が期待できそうです…!」
あすか:「それでは皆様、準備はよろしいでしょうか?時空を超えた舌戦、『歴史バトルロワイヤル』、いざ、開戦です!」
(スタジオの照明が変わり、議論開始のファンファーレが鳴る)