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永遠の白い花
白蓮と呼ばれ、ホワイトフラワーというコードを持った女性の享年は97歳。
公務員で、アンチエイジングを受けていれば、120歳ぐらいまで生きるのだが、過去に受けた凄惨な暴力は、彼女の寿命を削った。
「ああ、庭に咲いた花が死んでしまいました。私の白い花が」
葬儀に万界王が現れて、場が騒然とした。
世にもっとも尊い貴人が横を通り過ぎていく時、はっとしたように参列者はお辞儀をした。
見てはならぬ、と思ったのだ。
苛烈な惨殺期を体験している者で、生きている者はそう多くない。
ざっくりといえば、80年前の話である。
それでも、王はただ、暴力の化身であったから。
棺に納められた老婆の、死んでなお凛とした姿に、王は「ああ、かわらないですね」と、わずかに震えた声を出した。
影さえ白く、ただ白く。
汚泥より出でて、曇りなく咲いた花
立ち枯れしも、落ちる影は今なお白し
そう歌われ。
白い花の名前は死後も永遠に彼女のものだった。